『メソアメリカを知るための58章』 井上 幸孝編著 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『メソアメリカを知るための58章』 井上 幸孝編著

 「メソアメリカ」とは、メキシコ中部からグアテマラ、ベリーズ、エルサルバドルにホンジュラス西部、ニカラグア太平洋岸、コスタリカ北西部をも含む一帯を指し、古代(先スペイン期)から大河がないにもかかわらず多様な自然環境の下で農耕を基盤とし、車輪を使わず、基本的には石器だけで巨大な建造物を含む一大都市文明群を開花させ、スペイン征服後に植民地支配を受けながら文化の変容と新たな文化を生成しつつ、近代になって諸国家を形成してきた。本書はメソアメリカの地理的範囲、時代区分、文化と言語の多様性を明らかにした後、古代の歴史、文明の実像、思想と宗教、文化と社会を、スペイン人の征服によるアステカ王国、マヤ都市国家の終焉、植民地支配の中でのキリスト教化、社会と文化の変容を概述している。
 しかしながら、メソアメリカ史入門で終わらせず、植民地時代を経て独立後メキシコおよび中米諸国に分かれての国家形成の中で、先住民が多い地域でありながら権力に踏みにじられ、翻弄されつつしたたかに生き、現在も生き続けている独自の文化を持った人々としても紹介している。現代のメソアメリカ社会の信仰、祭礼、農耕と儀礼、村落自治制度、都市と先住民村落、織りと装い、遺跡利用と観光開発などいまの姿を概観し、最後にメキシコにおける「先住民」イメージの誤解や思い込みにも言及している。
メソアメリカ文明の盛衰を時間という縦軸と内部の共通性、多様性という横軸から、14人の考古学、文化人類学、歴史、地域研究者が分担して総合的に解説している。

〔桜井 敏浩〕

(明石書店 2014年5月 362頁 2,000円+税)
〔『ラテンアメリカ時報』2014年秋号(No.1408)より〕