『ブラジル人の処世術 -ジェイチーニョの秘密』 武田 千香 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ブラジル人の処世術 -ジェイチーニョの秘密』 武田 千香

 jeito(方法、手段、便宜)の縮小形jeitinhoは簡単にいえば決められたルールに触れても要領よく臨機応変に対応してちゃっかりと目的を達することを指す。日本人の多くがもつ順法精神や几帳面さからみればブラジル人はずるいとか規則にルーズと見えることも少なくないが、ジェイチーニョこそブラジルらしさであり、ブラジルで生活していくために欠かせない流儀で、いわばブラジル人のアイデンティティにもなっているという。
 社会の「規律・秩序」と個人をまず考えその「都合・必要性」との間のグレーゾーンとして、社会認知されているこのジェイチーニョの事例や小説での取り上げ方、パウリスタ(サンパウロっ子)とカリオカ(リオデジャネイロっ子)の感覚の比較、それらの背景にある歴史構造、ブラジル文化の根底を流れるサッカー、カポエイラ、サンバ、ボサノバでのリズムのずらし効果など、多面的に論じていて、ブラジル人、ブラジル社会を本当に理解する上で面白い解説書。

〔桜井 敏浩〕

(平凡社(新書)2014年6月 211頁 760円+税)
〔『ラテンアメリカ時報』2014年秋号(No.1408)より〕