『緑の光線』 (『メキシコの悲劇』) ジュール・ヴェルヌ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『緑の光線』 (『メキシコの悲劇』) ジュール・ヴェルヌ

『海底二万哩』『八十日間世界一周』などの科学冒険小説を書いた著者の、1851年24歳の時に書いた初期の短編小説『メキシコの悲劇』が本書に収められている。

米州のみならずフィリピン等アジアやグアム島等マリアナ諸島などの大洋州にも植民地を持ち、無敵艦隊と呼ばれたスペイン海軍も、メキシコ独立の頃から凋落して兵への給与支払いも遅れ士気が乱れて、グアムにサボタージュと思われる損傷修理に立ち寄った2隻は艦長・士官に対する反乱が即発の瀬戸際にあった。はたして出航後、マルティネス大尉を首謀者に反乱が起き、艦長は殺害された。反乱者達は艦をメキシコに向け、独立しても海軍の艦艇を持たないメキシコに売りつける魂胆であった。殺された艦長に忠誠を誓っていたパブロ見習士官とハコボ下士官は大尉に服従の意を表して行動をともにするが、アカプルコに入港すると同時に姿を消す。港の司令官は艦船を購入する権限は無いので首都で許可を取るよう求め、大尉とメキシコの地理に詳しいホセ甲板員は馬に乗って出発する。しかし、大尉は何者かに見張られている不安を感じているうちに、不自然な落石で乗馬を失い、それでも徒歩でメキシコ市を目指すが、ついにポポカテペトル火山の山間の道で恐怖に襲われた大尉は錯綜してホセを刺殺、自身も縄で作られた吊り橋に逃れたところで、仇討ちのため追っていた二人の男-パブロとハコボに綱を切られて落下する。

2隻のスペイン艦は、そのままメキシコ新共和国に留まり、メキシコ艦隊の中核となって、その後テキサスとカリフォルニアを巡ってのアメリカ合衆国戦艦と闘ったのである。

(中村三郎・小高美保訳 文遊社 2014年8月 323頁 2,700円+税)