『「はじまり」を探る』 池内 了編 (第Ⅲ部 人の部 「古代アンデスにおける神殿の「はじまり」 -モノをつくりモノに縛られる人々」 関 雄二) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『「はじまり」を探る』 池内 了編 (第Ⅲ部 人の部 「古代アンデスにおける神殿の「はじまり」 -モノをつくりモノに縛られる人々」 関 雄二)

研究者養成を目指した大学院のみの国立大学法人である総合研究大学院大学の創立25周年を記念して行われた「はじまり」シンポジウム「私たちは何処より来た」か?では、はじまりそのものへの問いかけについての宇宙、自然、人間に関わる様々な分野からの発表が行われたが、その13人の研究者論考を集成した論集の中に、考古学者である関 雄二同学文化科学研究科教授(国立民族学博物館研究戦略センター教授)が古代アンデス文明形成期の神殿更新説を通して、社会の成り立ちを探っている。

1960年代に日本の調査団が発掘したペルー中部のコトシュで「交叉する手の神殿」が発掘された当時、神殿建設は農耕定住、余剰生産物の発生、階層化された都市国家と権力者のリーダーシップによってある程度短期間に大型建造物が造られたとの前提の唯物史観が幅を利かせていたが、それでは説明がつかない、社会構成員の自主活動として長期にゆっくりと造られ継続的な更新を繰り返していたことが明らかにされた。しかも神殿の建設とそれを破壊して行われる更新が、排水や灌漑水路などの技術革新にもつながり、それまでの神殿の一部を破壊する儀礼の後に重層的に更新されれ巨大化することが、建設者の行為や世界観にも変化をもたらし、やがて神殿の中で活動する一部集団と、外から眺めるだけの集団に人々を分化させた、極論すれば神殿のはじまりはその集団の人々の偶然であり、神殿が更新の度に大きくなっていくことは意図せざる結果と言えるのではないかと指摘している。

本書には本論に限らず、宇宙の創生であるビッグバンから地球上での生命誕生、ヒトの始まりと進化、家畜飼養や農耕の起源、人間と自然相互作用や言語・感情のコミュニケーションなど、知的刺激に満ちた論考が収められている。

〔桜井 敏浩〕

(東京大学出版会 2014年9月 222頁 2,400円+税)