『神戸移住センターから見た日本とブラジル』  黒田 公男 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『神戸移住センターから見た日本とブラジル』  黒田 公男

 関東大震災の2年後1925年に海外移住が国策とされ、28年に神戸に移住者保護のための施設「国立移民収容所」が開設された。海外への移住者はここで1週間余滞在しオリエンテーリング、健康検査や予防接種などの出発前の準備を行った。この収容所は後に名称を変えて大戦が始まった41年にいったん閉鎖されたが戦後の移住開始で52年に再開され64年に現在の名称になった。71年に神戸港から最後の移民船が出て93年には国策としての海外移住は終わったが、神戸市に払い下げられたセンターを海外移住の歴史を遺すべく2009年に改装が終わって「神戸市立海外移住と文化の交流センター」として開館、中に「海外移住ミュージアム」も設けられ、運営は一般財団法人日伯協会が行っている。
 本書は、ブラジル移住の黎明期から、1926年神戸に日伯協会が誕生し最初の大事業として移民収容所建設を行ったことから、戦前の同所の使われ方、ブラジル移住を描いた石川達三の小説『蒼氓』の背景、戦後のブラジル移住再開の舞台裏を明かし、ブラジルでの日本移民の受け入れ、移民船の歴史、ブラジルでの日本人移住者の活躍や移住ミュージアムの意図など、神戸新聞勤務時代から移民研究を続けてきて、長く移住センターに関わってきた著者(日伯協会理事)ならではの記録である。
                             〔桜井 敏浩〕

(神戸新聞総合出版センター 2014年11月 221頁 2,500円+税 ISBN 978-4-343-00815-2 )

〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕