『ブエノスアイレスに消えた』 グスタボ・マラホビッチ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ブエノスアイレスに消えた』 グスタボ・マラホビッチ

1999年4月、ブエノスアイレスに住む建築家ファビアンの4歳になる一人娘モニカがペルー娘のベビーシッターと出かけ、地下鉄の駅でぷっつりと消息を絶つ。警察の捜査ではほとんど何も掴めぬまま、モニカの母リラは飛び降り自殺をしてしまう。ファビアンは私立探偵ドベルティの協力を得て独自の捜査を進め、目撃者を見つけて失踪した二人が下りた地下鉄駅を割り出し、ついに立ち寄ったペンションに辿りついて、惨殺されたペルー娘の死体を発見する。しかし、警察が再び動き出した捜査も進展なく年月が経過したが、ファビアンが当初の捜査刑事の息子がペルー娘殺害に関わる拳銃を持っていることを突き止めたことを聞いたドベルティは、その家に忍び込み証拠となる物を捜している時に何者かにペルー娘と同じ手口で殺される。しかし死の直前に入手したブロンズの蜘蛛のネックレスは握り締めた手の中にあった。

さらに歳月が流れ、ファビアンはその蜘蛛の造型のデザインを美術館の扉で見て、それらのデザイン、材料金属の組成からついにある彫刻家の手になるものと見当を付け、既に死去した彫刻家のアシエンダ(荘園)のある北東部のパラナ州の密林に向かう。そこで知った妻の結婚前の隠された生い立ちと娘の出生に関わる秘密、モニカを誘拐した犯人の動機とモニカとの再会は?...と、話しは一気に大団円に至る。

多くの関係者が死亡するなどして居なくなる迷路の中を進むうちに、最後に明らかにされるとんでもない家族関係や失踪事件に通じた出来事が、いかにもラテンアメリカ文学の影響を強く感じさせる描写や時間の流れの表現で展開され、推理小説・父が娘を捜し出すヒーロー物語りとは一線を画している。
〔桜井 敏浩〕
(宮﨑真紀訳 早川書房(ポケット・ミステリー・ブックス) 2015年5月 598頁 2,300円+税 ISBN 978-4-15-001895-5 )

〔『ラテンアメリカ時報』2015年夏号(No.1411)より〕