『古代文明アンデスと西アジア 神殿と権力の生成』 関 雄二編 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『古代文明アンデスと西アジア 神殿と権力の生成』 関 雄二編

 これまでの古代文明史では、まず農耕・牧畜が発達しそれによる食糧生産の拡大と人口増があって発達したという経済重視の文明論が多かったが、それでは説明がつかない事例が東京大学を中心とした日本調査団が50年余をかけて解明を進めてきたアンデス文明である。1960年にペルー中部コトシュ遺跡から先土器時代の祭祀建造物が出土し、神殿建設と土器製作は農耕定住後という当時の考古学常識を覆す発見がなされ、以後北部や高地・海岸などでの広範な発掘調査の積み重ねから、神殿は建て替え、すなわち神殿更新が繰り返し行われてきたが、それは余剰生産物により食糧生産に従事しない技能者集団や上位階層を養えるようになり、その上位階層が権威を守るために神殿を造らせたのであって、余剰生産物、すなわち富の蓄積の無いところに神殿が出来る筈がないというそれまでの解釈を覆すものだった。
同様に新石器時代に入って間もなく巨大な祭祀センターをまず築いたメソポタミアとの両古代文明を比較しながら、文明の形成期に権力はどのように生まれて、社会階層が形成されていったのかを、神殿の登場、儀礼の発達、権力の発生、神殿更新を辿り、神殿と社会の複雑化を考察しそれらの過程を解析していて、知的刺激ある解説書。
                                〔桜井 敏浩〕
(朝日新聞出版(朝日選書) 2015年8月 255頁 1,300円+税 ISBN978-4-02-263035-3 )

〔『ラテンアメリカ時報』2015年秋号(No.1412)より〕