『アンデスの聖人信仰 -人の移動が織りなす文化のダイナミズム』 八木 百合子 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『アンデスの聖人信仰 -人の移動が織りなす文化のダイナミズム』 八木 百合子

 スペインによる植民地統治の過程で、住民の経済的統制とキリスト教化のために、高度差等の自然環境を活かした生業を営むために散らばっていた住民の強制集住政策(レドゥクシオン)が行われ、住民に納税・賦役義務とともにキリスト教祭礼執行のための宗教的組織義務が課せられた。祭礼ではその町村の守護聖人の祝祭が重視され、聖人信仰が盛んになった。一方、資源獲得のための一時的移動に加え、20世紀後半から経済発展による都市部での労働需要増大、農村部での人口増大、さらには1970年後半頃よりアンデス高地都市から起きた極左反政府組織と軍隊の武力衝突を逃れて農民が居住を離れて都市へ移住するという社会構造の大きな変化が生じた。本書はかかる人の移動の波の中で、根強い聖人信仰がどのように変容しているかを、ペルー南部の農村と多くの住民が移り住んだ首都リマの集住地のフィールドワークによって、その文化のダイナミズムを考察したものである。
 アンデス高地の村での聖人に関わる祭礼の役職、従前からの守護聖人とその後20世紀後半に入ってきたペルーの守護神であるサンタ・ロサ信仰の祭礼の盛衰を比較することで、村の聖人をめぐる諸相の変遷を見た後、リマに移住した同村出身者の居住地での聖人をめぐる祭礼、サンタ・ロサ祭礼ではマユラと呼ばれる踊りと衣装などを観察し、それぞれの場での準備組織と楽隊の雇い上げや振る舞い飲食などの費用等の経済基盤を比較するなどして、農村と都市の関係性、動態、現代アンデス農村文化のダイナミズムをそこに住む人々の活動を通じて解明しようとしている。
                                 〔桜井 敏浩〕
(臨川書店 2015年7月 222頁 3,600円+税 ISBN978-4-653-04251-8 )

〔『ラテンアメリカ時報』2015年秋号(No.1412)より〕