『生きるためのサッカー ブラジル、札幌、神戸 転がるボールを追いかけて』 ネルソン松原 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『生きるためのサッカー ブラジル、札幌、神戸 転がるボールを追いかけて』 ネルソン松原

 北海道江別から父の代にブラジルへ移民して生まれた二世の著者は、大のサッカー好きだったが母からはプロの道へ進むことを禁じられ、体育大学へ進学し保健所・銀行で働きながら勉学とサッカーに励んでいた。札幌大学が日系人サッカー留学生を募集していること知り応募、大学を休学して日本へ向かう。2年間の留学期間中、札幌大学のサッカーにブラジルスタイルを持ち込み、子供たちに当時は未だ無かったフットサルを教え、その競技規則の日本語訳にも加わった。社会人チームからの誘いを断り、ブラジルの大学に復学、卒業し保健所の同僚の日系人と結婚してスイミングスクールの共同経営者になったが、再び札幌大学の恩師から少年サッカーのコーチにと誘われて北海道へ。以後札幌一高のコーチ、神戸に移って川崎製鉄サッカー部のコーチ兼ブラジル人選手の通訳をしていたが、阪神淡路大震災に遭遇。ヴィッセル神戸のユースチームでのコーチ、監督の後、FC神戸のコーチを経て再びヴィッセル神戸に呼び戻され男女の大人相手にサッカー普及を目指すスクールの仕事や通訳を務めた。2010年に神戸スポーツアカデミーの立ち上げに加わり、大人のサッカー教室とフットサル普及を、また夫人とともに関西ブラジル人コミュニティというNPOを拠点にブラジル人子弟の支援活動を行っている。
 日系ブラジル人の目でみた日本人との社会・文化の差違、両国のサッカーの戦術や発想の違い、日本からブラジルへのサッカー留学生の実態、日本で日系人が暮らし、教育を受けることの苦労、自身が経験したサッカークラブ運営や若手選手の育て方の違和感などを随所で率直に語っており、単なるサッカー大好きな日系ブラジル人の半生記に終わっていない。
                                〔桜井 敏浩〕
(松本 創(取材・構成)・小笠原博毅(取材・解説) サウダージ・ブックス 2014年6月 239頁 1,800円+税 ISBN978-4-907473-04-4 )

〔『ラテンアメリカ時報』2015年秋号(No.1412)より〕