『笠戸丸移民 未来へ継ぐ裔孫』 赤嶺 園子  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『笠戸丸移民 未来へ継ぐ裔孫』 赤嶺 園子 

1908年の第1回笠戸丸移民のうち、沖縄県出身者325名の出身市町村別名簿とその六世に至る子孫から聞き取った調査内容、入手できた本人・家族・移住地や所持していた旅券等の写真を整理し集大成した、移住者リストと子孫家族動向。

著者の住むサンパウロ州のみならず、リオデジャネイロ州、南マットグロッソ州、さらにはアルゼンチン転住者の足跡を追ってアルゼンチンに、帰国者と親類等については沖縄県にも足を運んで、移民の墓碑銘を探し、子孫を見つけ出して聞き取り調査をしている。

当時の旅券には写真がなく、身代わり渡航、農業家族移民のみの許可となっていたため別人を便宜上の家族にするなど家族構成で偽名を使った人、結婚して姓があらたまり、また再婚して姓を変えた人、同姓同名者の存在や死亡年月日不明や正式姓を名乗れなかった先駆者もおり、ブラジル永住者ばかりではなくその後アルゼンチンに転住したり帰国した移民もいるなど、調査は困難を極めたが、ブラジル全土に沖縄、アルゼンチンを含めて墓碑銘で死亡年月日を確認したという。

それらの調査の中から、日系人として初の運転免許を取り、大統領の自家用車運転手になった比嘉秀吉や、アルゼンチンに転じ10年間で“故郷に錦を飾って”帰国を果たしたものの1945年の沖縄戦で命を落とした比嘉嘉那、その孫がアルゼンチンにいることが判明したなど、波瀾万丈の逸話も含まれており、また女性調査者ならではの、これまでとかく男性中心であった移住史とは異なる移民女性の生涯にも目が向けられている。

これらはもはや移民足跡調査の域を超えた著者の慰霊の念が込められていると感じさせる大変な労作である。

〔桜井 敏浩〕

 

(ニッケイ新聞発行   沖縄タイムス社出版部発売 2014年10月 306頁 2,000円+税 ISBN-978-4-87127-658-0)