『ボッサ・ノーヴァな建築考 -住宅から都市デザインへ』 南條 洋雄 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ボッサ・ノーヴァな建築考 -住宅から都市デザインへ』 南條 洋雄

 大学で都市工学を専攻し卒業後建築事務所に就職したが、海外志向から5年で退職し、1975年27歳の時に思い切ってブラジルへ渡航、サンパウロで名高い建築家の事務所を皮切りに設計事務所、コンサルタント会社で信頼を得て、公共建造物やニュータウンの設計の実績を挙げていく傍ら、仕事も家族も趣味も充実した日々を送り、文字どおりボッサ(隆起)・ノーヴァ(新しい)経験を得ることができたが、ブラジル生活が10年経ったところで帰国、東京の青山で設計事務所を開設し都市デザインと建築設計分野で幾多の実績を挙げている著者の半生記。
 ほぼ半分は、ブラジルでの設計事務所等で働いた経緯とチームでの仕事の仕方、デザインの基本を考え豊富な人脈を駆使して営業活動を行うエリートの建築家と、その下で専門分野毎に働く建築士・エンジニアとの分担の仕分けなど、日本との仕事のやり方の違いが述べられていて興味深いが、巻末に収録された「遷都50周年ブラジリアの都市計画と建築」(本誌2010年夏号に寄稿したものに一部修正)は、遷都が実行者クビチェック大統領の思いつきではなく長い歴史的関心事の結果であったこと、首都という目的のために造られ、道路や街区設計、土地利用や用途規制などのアイディアが試みられ、優れた計画都市であること、ニーマイヤー設計の建物も地下を活用するなど気候条件をよく考えられており、人と自動車の区分がきちんとなされているなど、住み易さを追求していることなどが世界で最も若い文化遺産と認定された所以であると、これまでブラジリアについて多かった事実誤認を正している。「クリティーバのマスタープランから学ぶもの」は、1964年のコンペで採用された都市構造提案が基本となって、自動車より便利なバスシステムでの道路通行体系、公園や歴史的建造物保全を取り込んだ街並み、塵処理や市民の環境共生教育など、クリティーバから学ぶものを紹介するとともに、ブラジリアと違って日本の都市は部分でしか景観美を考えずマクロでの都市景観の視点を欠いていると指摘している。
                                〔桜井 敏浩〕

 (コム・ブレイン 2015年5月 222頁 1,600円+税 ISBN-978-4-9901689-5-7 )
 
〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕