『コルテス報告書簡』 エルナン・コルテス 伊藤昌輝訳 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
Japanese English

『コルテス報告書簡』 エルナン・コルテス 伊藤昌輝訳

 メキシコの征服者エルナン・コルテスが、戦いの最中にスペイン王カルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)宛てにしたためた五通の書簡の完訳。コルテスはほんのひとにぎりの冒険家を率いて、あの好戦的なアステカ民族とその壮大な帝国に立ち向かいこれを征服した。米国の歴史家ウイリアム・プレスコットも、アステカ文明崩壊のいきさつは現実の歴史というよりまるで小説のようだと述べているが、まさに騎士道小説さながらであるといえよう。コロンブスが「新世界」に到達してから20数年間、スペイン人と西インド諸島、つまりカリブ海の大アンティール諸島先住民との接触はあったが、メキシコの先住民社会はアンティール諸島のいわば未開の先住民とは質的に異なる高度な文明をもっていた。したがって、コルテスのメキシコ征服はヨーロッパと「新世界」の真の意味での最初の文化的衝突であった。
 スペイン人征服者たちは必ずしも「黒い伝説」が描くような破壊と掠奪の権化でもなく、「白い伝説」が謳うようなキリスト教の教えを広める聖人と騎士の集団でもなかった。コルテスの実像を把握するためには、論争的立場からではなく、冷静に、一次資料に即して彼の人間的および政治的側面に迫るべきであろう。彼の書いたものを読めば、一般のコルテス像とは違ったイメージが現れるのではないかと思われる。
 宗教的理念を語りつつ現実主義的外交を駆使し、冷徹な軍人として陣頭に立ちながら占領後の植民地経営を見据え、中世と近代のはざまを駆け抜けたあまりにも多面的な「征服者」の虚実が明らかになろう。
                           〔伊藤 昌輝-訳者〕

(法政大学出版局 2015年11月 582頁 7,400円 + 税 ISBN978-4-588-37404-3 )
 
〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕