『めずらしい花 ありふれた花 -ロタと詩人ビショップとブラジルの人々の物語』 カルメン L. オリヴェイラ - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『めずらしい花 ありふれた花 -ロタと詩人ビショップとブラジルの人々の物語』  カルメン L. オリヴェイラ


 リオデジャネイロのボタフォゴ海岸沿いに美しい公園がある。環境と開発に関するリオ宣言を出した環境と開発に関する国連会議の会場にもなったが、その発案し実現に奔走しながら軍政の発足で失脚した女性建築家ロタ・ヂ・マセード・ソアレス(1910~67年)と、米国の女流詩人エリザベス・ビショップ(1911~79年)の出会いと愛の生活、別れを追った評伝で、著者はリオに生まれ米国で学んだ女性作家。
 1951年に創作に行き詰まってリオにきたビショップは、友人メアリーの紹介でロタとであり、熱帯果実アレルギーで体調を崩したことからロタの世話になり、ロタが設計して建設中のペトロポリスの山間の家に移り、「家庭」として暮らしを営むことになった。この家はビエンナーレ建築賞を受賞し、ビショップも1956年にピューリッツァー賞の詩部門を受賞したが、ボタフォゴ公園建設の仕事に打ち込むロタとビショップの飲酒依存、ロタが政治に翻弄されて公園事業から放逐されて心身とも傷ついたことから二人の関係は破綻した。その後、米国に戻ったビショップは詩人として名声を集めるが、ロタは1967年にビショップを追ってニューヨークに渡るが事故か自殺かで生涯を閉じた。
 ビショップについては著者、訳者も参加するビショップ学会があるほど英米圏では知られているが、ロタについてはブラジルでは忘れられていたものの、リオ市政450周年記念行事に「市のヒロインたち」として7人の女性の一人として挙げられ名誉回復がなされた。                                                
〔桜井 敏浩〕

(小口未散訳 水声社 2016年2月 3366頁 3,500円+税 ISBN978-4-8010-013102 )

〔『ラテンアメリカ時報』2016年春号(No.1414)より〕