『ブラジルのアジア・中東系移民と国民性の構築 -「ブラジル人らしさ」をめぐる葛藤と模索』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ブラジルのアジア・中東系移民と国民性の構築 -「ブラジル人らしさ」をめぐる葛藤と模索』

ブラジルの支配層のアジア系・中東系移民の受け入れ是非をめぐる言説と、ブラジ
ル社会の中で独自のエスニックな空間を築いている主にレバノン・シリア人と日本人
移民のアイデンティティ構築をめぐる闘いを、米国のブラジル史学者が考察したもの。
多様な人種・民族の移民から成るブラジル社会は人種隔離がないと言われるが、そ
れは欧州文化とカトリック信仰への同化が暗黙のうちにあるからで、民族の異質性を
維持しようとすると不同化とされ排除される。ブラジルの多人種性は欧州白人・先住
民インディオ・アフリカからの黒人の三人種融合と言われるが、その人種混淆は植民
地時代初期までは白人と先住民、独立以降は白人と黒人の混淆が前提の国民統合であ
った。その中でマイノリティである後発の中東アラブ系・ユダヤ系・日系のエスニシ
ティが存在し独自の空間を確保しようと闘ってきたことに着目し、その闘いと「ブラ
ジル国民」の概念にもたらした変化を明らかにしようとしている。ブラジルを欧州的
に改造しようと考案された数々の移民政策が、実際には極めつきの多文化社会を創造
したという指摘は興味深い。                 〔桜井 敏浩〕

(ジェフリー・レッサー 鈴木 茂・佐々木剛二訳 明石書店 2016 年3 月 394 頁 4,800 円+税 ISBN978-4-7503-4296-2 )

〔『ラテンアメリカ時報』2016年夏号(No.1415)より〕