『ギュンターの冬』  ファン・マヌエル・マルコス | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ギュンターの冬』  ファン・マヌエル・マルコス

 長年国外に住み、政治には無関心で、現在は米国に住み世界銀行の総裁をしているドイツ系パラグアイ人のギュンターには、白人と黒人の混血である米国人で大学教授をしている妻イライザがいる。ギュンターの妹の娘ソレダーは若い詩人だが、現政権(1954年にクーデタで奪取し89年まで独裁政治を行ったパラグアイのストロエスネル将軍の政権を指しているが、この小説では舞台をアルゼンチンのコリエンテスに設定している)に反対する活動家で、逮捕されたのをきっかけにギュンターは社会意識に目覚め、帰国してソレダーの救出に奔走する。結局はイライザがアポイントを取り付けた騎兵隊司令官に会ってソレダーの出所を働き掛けたものの、ソレダーは遺体となって引き渡される。最後にギュンターは祖国の役に立とうと世銀の職を辞して帰国するも、3年後にクリスマスの季節に癌で亡くなり、イライザは侘しく墓守をするというところで物語りは終わる。
 著者もストロエスネル独裁政権下で投獄や国外追放を経験し、米国で教鞭を取っていたが、軍事政権が終わった後帰国し、北方総合大学を設立、学長として広く文化教育活動をしている。作品全体に古今東西や著者自身の詩、歴史書やラテンアメリカ文学からの引用が実に多くなされ、著者の教養・知識の広範さに驚かされる。それらには詳細な注が章毎に付記されているが、煩雑過ぎてストーリーの展開には直接結びつかない記述運びは、ラテンアメリカ文学によく見られるものだが読了するのに若干忍耐を要する。
                               〔桜井 敏浩〕

 (坂本邦雄・久保恵訳 悠光堂 2016年7月 383頁 2,000円+税 ISBN978-4-906873-60-9 )

 〔『ラテンアメリカ時報』2016年秋号(No.1416)より〕