『オルフェウ・ダ・コンセイサォン  -三幕のリオデジャネイロ悲劇』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『オルフェウ・ダ・コンセイサォン  -三幕のリオデジャネイロ悲劇』

ギリシャ神話にある、オルフェイスが恋人エウリュディケーの死を嘆き、闇の世界の王に彼女を太陽の世界に連れ戻す許しを得るが、その条件である闇の世界を出るまでは決して振り返えぬことを、まさに太陽の世界に出る寸前で破り永遠に彼女を失う。オルフェイスは彼女を探す旅に出るが、その一途さに侮辱されたと感じたバッカスの信女たちに八つ裂きにされる。しかし詩の女神たちがその遺体をかき集め聖なるオリュンポスの山麓に埋めるという冥府帰りの話しを、ブラジルの詩人・外交官・ジャーナリストの著者が、舞台を現代のリオデジャネイロの丘に、オルフェイスの竪琴をギターに、冥府をカーニバルの最中にナイトクラブで行われている黒人たちのダンスパーティに換えて、オルフェウとユリディスの悲恋を戯曲にしたのが本書である。その上演準備の中で作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンと出会い、ブラジルの新しい音楽スタイル「ボサノヴァ」誕生に大きな役割を果たしたコンビとなって、『イパネマの娘』などの名曲を残し、「ボサノヴァの詩人」と称されている。

この戯曲を翻案しリオデジャネイロのカーニバルを舞台にして撮影したのが、フランス人の映画監督マルセル・カミュが1959年に制作した映画『黒いオルフェ』である。カンヌ映画祭で賞を取り世界的にも大ヒットし、今でも多くの人々の脳裏に残っているが、著者はブラジルをめぐる異国趣味の映画に過ぎにないと、大統領官邸で行われた試写会を途中で退席したという。

映画『黒いオルフェ』との違いは、二人の悲恋だけでなく、オルフェウの両親の存在があることで、特に母クリオの息子への愛を描くことが、二人の恋の物語り以上になっているかのようである。なお、この戯曲の中ではジョビンの作曲した「誰もがきみみたいなら」“Se todos fossem iguais a você”の美しい曲が用いられているという。

〔桜井 敏浩〕

 

(ヴィニシウス・ヂ・モライス 福嶋伸洋訳 松籟社 2016年9月 172頁 1,600円+税 ISBN978-4-87984-348-7 )