『インカ帝国を知る』  木村 秀雄 ・ 高野 潤  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『インカ帝国を知る』  木村 秀雄 ・ 高野 潤 

インカについて、アマゾンやアンデスに詳しい人類学者と写真家によるジュニア向けの解説書。「第1部 インカを知る」(木村)では、はじめにインカ国家とはいかなるものかから入り、インカはどこから来たか、文字を持たなかったインカの記録文書の読み方、なぜインカ国家が「帝国」と呼ばれるのか、インカとは誰のことかなど、基本的概念を明らかにし、インカ国家の拡大、それにともなう王と従属者の関係の変質、広大な地域の征服法、その手段であった贈与と再分配などの歴史を概観し、インカの経済を支えた自然環境、インカ以前のアンデス文明、農牧畜業、農牧畜儀礼の解説した後、現在の先住民文化の中にインカの遺産がどのような形で残っているかを、筆者のフィールドワークでの観察に基づいて述べている。

「第2部 インカを知るための10の視点」(高野)は、奇跡ともいえる形で飛躍したインカの足跡を写真を中心に辿ってみようというもので、遺跡等から太陽信仰が行われた神殿や儀礼・神託が行われたワカ(聖所)、城塞都市、高度な石造りや水利用技術とアンデネス(階段畑)の農業、カパック・ニャン(インカ道)網、墳墓などを、それらを支えたアンデス原産の現在市場にも並ぶ食物、海での漁獲法や魚介を紹介している。

様々な視点からインカの姿を平易だが内容の濃い解説になっている。ただ折角多数の写真の載せながら、巻頭口絵写真以外はモノクロなのは惜しい。

〔桜井 敏浩〕

(岩波書店(ジュニア新書) 2015年11月 194頁 960円+税 ISBN978-4-00-500819-3 )

-著者の一人 高野 潤氏は2016年9月に逝去されました。アンデス、アマゾン河の大自然、そこに住む人々の生活、古代文明の遺跡などを精力的に撮影・取材してこられた氏の早過ぎる他界は残念です。