『マヤ文明 -文化の根源としての時間思想と民族の歴史』  実松 克義  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『マヤ文明 -文化の根源としての時間思想と民族の歴史』  実松 克義 

アンデス・アマゾン・マヤ地域で調査を重ねてきた、シャーマニズム、古代文明研究-宗教人類学・文明学を専門とする著者(立教大学名誉教授)の四半世紀にわたるマヤ研究の集大成。現代も使用されているマヤのカレンダーの生命と宇宙の神秘の背後にある時間思想に着目しマヤ文明の全体像を描こうとした大部の労作。

本書は現代マヤ文化の概説から始まり、マヤの地理環境、現在30を超える言語、伝統宗教・原始信仰とキリスト教等の重層構造である現代マヤの宗教、マヤの十字架、マヤの科学について言及し、太陽暦・神聖暦カレンダーと時間思想-長期計算法、暦の根底をなすマヤの知恵の主体性である「20ナワール」の意味、文字や解釈、ルーツ、20ナワール思想の中核であるマヤの時間思想と古代マヤ文明、マヤの起源および崩壊の諸説、『ポップ・ヴフ』神話の意味するもの、高度な文明をもっていたと高い評価を受けている反面、生贄などの流血と虐殺、戦争を続けたというマヤ文明をそのいずれかだけに着目するのではなく、高い人間性をもっていたのだとするその精神史、そのマヤ思想の根幹であり現代にも色濃く残っている「カバウィル」(異質な二者の協力・調和によって世界は創造され発展するという理想主義)を考察している。このように独創的・知的な思想をもち理想社会を目指したマヤ文明だが、現代社会は無数の問題、不均衡、破綻があって、確実にカバウィルとは逆行する道を進んでいると結んでいる。

〔桜井 敏浩〕

(現代書館 2016年9月 478頁 6,500円+税 ISBN978-4-76845772-6 )