『文明の基層 -古代文明から持続的な都市社会を考える』  長田 俊樹、杉山 三郎、陣内 秀信 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『文明の基層 -古代文明から持続的な都市社会を考える』  長田 俊樹、杉山 三郎、陣内 秀信

全国31の大学出版部が加盟する協会が発行した、市民シンポジウムを基に刊行されたブックレット。

第1章「インダス文明:ネットワーク都市-中央集権的文明論を覆す」(長田)は、インダス文明はインダス河からはかなり離れた都市文明が多く、「大河文明」とは言えないのではないかとの指摘からはじまり、第2章「新世界最大の古代都市テオティワカン:英知の集積としての都市」は、杉山の長い考古学研究を通して得た、環境(川の存在や気候)が人間の文明のあり方を決めるのではなく、いろいろな条件の中で人間が採ってきた手段、認知能力、英知、それによって生まれた技術や進化する社会組織が文明発祥の引き金になっているということを、テオティワカンという都市を例に紹介している。完全計画都市として造られ、高度な暦と数の体系をもっていたこと、二元性という考え方を太陽と月のピラミッドで、生贄を伴った墓からは何が読み取れるかを論述している。豊富な食料をはじめ物を集めるネットワークの存在、伝達手段としての文字、文明の確立から戦争があったこともあって政治体制・権力構造・そのシンボル体系が崩壊した都市ティワカンだが、それは文明の崩壊ではなく人類の英知と能力は文明の基層として残っているとしている。

現代のヴェネツィアを舞台に、都市はなぜ人間を集め、その求心力をもつのかを再考した第3章「水都ヴェネツィア:交易都市から文化都市へ」(陣内)とともに、教科書的知識としての歴史をあらためて常識を疑い、検証し論証した、小冊子ながら示唆に富んだ文明論集。

〔桜井 敏浩〕

 

(大学出版部協会 2015年6月 78頁 1,200円+税 ISBN978-4-13-003152 )