『越境と連動の日系移民教育史 -複数文化体験の視座』 根川 幸男・井上 章一編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『越境と連動の日系移民教育史 -複数文化体験の視座』 根川 幸男・井上 章一編著


 近代の日本人移民史の中で各地域の個別実態と複数地域の横断的・越境的把握を目指してブラジル史等の歴史学、文化人類学、社会学、音楽史などの多彩な研究者による移民教育史の共同研究の成果。
 ブラジルに関わる章としては、日系移民子弟教育と教科書を取り上げた「第2章 ブラジル『日本語読本 教授参考書』の児童用歌曲」(伊志嶺安博長崎外大講師)、文化・芸術・スポーツを扱った「第8章 文化使節と同胞慰問-ブラジルの藤原義江一人二役」(細川周平国際日本文化研究センター教授)、「第10章 沖縄・日本本土・ブラジルを越境・還流する沖縄音楽レコード」(高橋美樹高知大学准教授)、「第11章 衣と身体技法からみるブラジル移民」(西村大志広島大学准教授)、「第12章 戦前期ブラジルにおける武道と教育」(小林ルイスサンパウロ人文科学研究所理事)、「第13章 越境するスポーツと移民子弟教育」(根川幸男同志社大学講師)、移民知識人・政治家などの人的資源の活用を論じた「第14章 ブラジル外国移民二分制限法前後の日系子弟教育-『日主伯従』に傾いた経緯について」(飯窪秀樹外務省外交資料審査員)、「第15章 戦間期ブラジルの独裁政権とナショナリズムの高揚」(住田育法京都外大教授)、「第17章 移民的徳の誕生-1950~60年代の海外移民政策と政治的主体としてのブラジル日系人の形成」(佐々木剛二慶應義塾大学特任助教)と、それぞれ短いながら内容の濃い論考が収録されている。
                               〔桜井 敏浩〕
 (ミネルヴァ書房 2016年6月 470頁 8,000円+税 ISBN978-4-623-07544-7 )

 〔『ラテンアメリカ時報』2017年春号(No.1418)より〕