『ラテンアメリカの市民社会組織 -継続と変容』 宇佐見 耕一・菊池 啓一・馬場 香織編著 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ラテンアメリカの市民社会組織 -継続と変容』 宇佐見 耕一・菊池 啓一・馬場 香織編著

 1970年代末からの軍政が80年代前半に終焉し民主主義体制に移行したラテンアメリカ諸国は、80年代に始まり90年代に本格化した新自由主義経済改革により、輸入代替工業化というそれまでの国家主導型から市場経済重視の経済政策に移行したが、それは政治・社会にも大きな変容をもたらした。本書は民主化と新自由主義改革へのそれぞれの移行が、国家と市民社会組織あるいは民主主義と市民社会組織の関係性を考察し、その性格を5か国の事例研究により確認するものである。
 利益媒介と政策形成の観点から国家と市民社会組織を考察した第Ⅰ部では、メキシコの労働法制改革と政労関係の変容、ボリビアの鉱業政策決定過程から鉱山協同組合という市民組織の政策形成への影響力、歴史的に制度化が進まなかったペルーにおける政労関係、非制度的関係の継続を論じている。民主化後の民主主義の性格と市民社会組織の関係を考察した第Ⅱ部では、ベネズエラの参加型民主主義と市民社会組織のチャベス政権下での変容、連邦政府から市民社会組織への財政移転の決定要因、そしてブラジルの民主主義に潜む問題点、ブラジルの民主化定着後の国家とキリスト教系宗教集団との関係の変容を人工中絶やLGBT(性的少数者)についての議論を題材に分析している。
                                 〔桜井 敏浩〕
(アジア経済研究所 2016年11月 265頁 ISBN987-4-258-04626-3 )

  〔『ラテンアメリカ時報』2017年春号(No.1418)より〕