ご報告「アグスティン・ピチョット・ワールドラグビー副会長(アルゼンチン出身)とのラウンドテーブル」(2017年5月12日(金)開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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ご報告「アグスティン・ピチョット・ワールドラグビー副会長(アルゼンチン出身)とのラウンドテーブル」(2017年5月12日(金)開催)

 ラテンアメリカ協会は、5月12日に日本ラグビーフットボール協会(JRFU)と協力して、2019年ラグビーW杯日本大会の抽選のため来日したアグスティン・ピチョット・ワールドラグビー副会長をお招きし、出身国アルゼンチンのラグビー事情、ワールドラグビー(WB)の活動、日本ラグビーに対する期待などについて意見交換を行った。このランドテーブルには、ピチョット副会長のほか、デービッド・キャリジー・ワールドラグビー開発・国際部長や徳増浩司アジアラグビー協会会長などJRFU幹部、日亜経済委員会やラテンアメリカ協会の関係者など約20名が参加した。

 ピチョット副会長は、現役時代はイギリスやフランスのプロチームで活躍し、2007年にはアルゼンチンチームの主将としてW杯3位に貢献、まさに国を代表する英雄的ラガーである。問われるままにアルゼンチンのラグビー事情を語った。

 アルゼンチンのラグビーの歴史は意外に古く、1800年代に鉄道建設のため派遣されたイギリス人労働者の間でプレイされたのが始まり。その後1900年代を通じて、英国系移民を中心にクラブ・スポーツとして徐々に普及したが、圧倒的なサッカー人気の陰でマイナーな地位に甘んじていた。国内のラグビー人気に火がついたのは、初めて決勝トーナメントに進出した1999年W杯でアイルランドに歴史的な勝利を納めたのがきっかけだ。丁度、前回大会で日本が南アに勝利した時と同じような興奮が国を覆った。更に、人気を決定付けたのは、2007年W杯で強豪フランスチームを負かして見事3位に輝いた時だ。帰国後、空港でタクシーに乗った時、見知らぬドライバーから握手を求められ、タクシー代もタダにしてくれた。(笑)

 アルゼンチンのラグビー人口は約11万人。女子プレイヤーも増えている。ラグビーの普及はアルゼンチン・ラグビー協会の最大のテーマで、若いプレイヤーの育成と表裏一体だ。人気の裾野はサッカーとは比較にならない。サッカーの場合、多くの子供が将来のメッシを夢見て集まるが、10歳から12歳の間に優秀な子だけ選抜されてしまう。それに対し、ラグビーは元来がアマチュアスポーツで、国内各地のクラブでプログラムとして提供されており、自分がそうであったように、全ての子どもが参加できる。ラグビーが標榜する精神力・規律・情熱は教育目的にも相通じる。スポーツ振興に意欲を見せる現政権の理解も得て、幼い時からラグビーに親しめるように裾野を広げて行きたい。

 日本と同様、アルゼンチンも昨年からスーパーラグビーに参加している。有望なアルゼンチン選手の将来不安を解消し、能力アップとプレイに集中できるように、幾つかの支援プログラムが進んでいる。アルゼンチンには日本のような企業チームの伝統がないため、協会が21歳以上の有望選手とプロ契約を結ぶ方法を採用している。登録プロ選手は65名に達し、すでに二つのプロチームができている。ナショナルチーム(Los Pumas)のメンバー17名がプロ選手だ。さらに、ラグビーアカデミーに所属する19-20歳の中から有望な人材を選抜し、奨学金支援を行っている。

 WBでもラグビーの普及を最優先テーマに掲げ、世界で様々なプログラムを展開している。ラグビー・ゲームの醍醐味を守りつつルールの平易化を進めるのもその一つだ。また、地域的には南米を普及強化地域の一つに指定し、チリ、ウルグアイ、ブラジルにコーチを派遣し、普及とチーム強化に努めている。ブラジルはラグビー人口が2万人に達し、世界舞台での活躍も間近だ。数年以内に南米全体のラグビー人口は大きく拡大するだろう。

 日本ラグビーも近年大きく開花し、強くなっている。日本に体格差を不安視する意見があることは承知しているが、体格とラグビーのパワーは別物だ。ピッチの隙間に即座に展開できる敏捷さが勝負を分ける。今回の組み合わせ抽選での日本チームのくじ運の強さは別格で、2019年W杯での活躍が期待できるチームの一つだ。
 
 最後に質問に答える形で、ピチョット副会長は、今回のWB理事会で代表資格を現行の居住期間36ヶ月から60ケ月に厳格化する(2020年以降)ことが決まったことに触れ、自分もこの変更を積極的に支持したが、各代表チームが出身国の誇りをもって戦うためだと解説した。


アグスティン・ピチョット・ワールドラグビー副会長

会場の様子