『ジャングルの極限レースを走った犬アーサー』  ミカエル・リンドノード | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
Japanese English

『ジャングルの極限レースを走った犬アーサー』  ミカエル・リンドノード

世界の苛酷な土地でランニング登山、トレッキング、自転車、カヤック等の人力で競争するアドベンチャーレース。エクアドルのアマゾン河上流地域で、2014年11月 8日間で700kmを踏破する世界選手権に参加したスウェーデン人4人のチームに、途中から1匹の犬が加わった。飢えて体中傷だらけの野犬に食事を分け与えたことから、アーサーと名付けたその犬はチームに離れずどこまでも付いてくる。難所の川下りで大会係員から犬を連れていくことを止められ、カヤックで出発したチームに泳ぎが不得手なアーサーが川に飛び込み必死で付いてこようとするのを見かねて舟に引き上げる。高山地帯で、密林の中で、泥濘の道で睡眠不足と疲労で極限状態が続く中で、気力を振り絞って前進するチームにアーサーも必死に進み、その間に強い絆と信頼が生まれた。

幾度ものルートの読み間違えやチームメンバーの体調悪化もあって、このチームのレース結果は53チーム中12位というまずまずの成績で終わった。本書の後半はアーサーを母国に連れて行くことを決意した著者が、エクアドルとスウェーデンでの煩雑な手続きを踏みついにスウェーデンの妻と愛嬢の元にアーサーと帰ることが出来たが、その過程で“野良犬”に対する世間の冷淡な目、世間での犬の虐待の問題なども思い知らされる。挿入された多数の写真によって、次第に深まっていく著者たちとアーサーの絆が読者にも判ってくる。

〔桜井 敏浩〕

(坪野圭介訳 早川書房 2017年4月 339頁 1,800円+税 ISBN978-4-15-209682-1 )