『砂糖の社会史』 マーク・アロンソン、マリナ・ブドーズ  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『砂糖の社会史』 マーク・アロンソン、マリナ・ブドーズ 

 紀元前8000~7000年頃ニューギニア島で野生種の栽培が始まり、優れた甘味料として世界に拡大した砂糖は、15世紀にポルトガルが獲得したマディラ島が本格的な生産地となり、早くも1493年にはコロンブス到達後間もないイスパニョーラ島に持ち込まれ、以後カリブ海の西、仏、英領で大規模に栽培されるようになった。砂糖プランテーションは、その後も世界各地で行われるようになり、ブラジル等南米やハワイ諸島などに拡散したが、それにともないアフリカから拉致した黒人奴隷やインド人、中国人等数多くの労働者が砂糖の生産に従事させられるために移動した。
 本書は砂糖が世界に広がり、貴重な甘味料として珍重されていった歴史を辿り、これがついに大西洋を越えて新大陸に持ち込まれて以来、カリブ海の島々やブラジル等のサトウキビ農場・製糖工場で“地獄”といっていい苛酷な労働を強いたことを、多くの古い絵や写真とともに実態を明らかにしている。 他方で優雅な砂糖農園所有者の生活や砂糖が英国での喫茶の普及を促したこと、砂糖産業を支えてきた奴隷交易が実に多くの犠牲者を出しつつやがて米、仏、英国における奴隷解放の動きの高まりで禁止され世界史を大きく変えたが、“自由”になった筈の労働者の苛酷な労働は、南アフリカへ出稼ぎに出たインド人(その改善を主張したのがガンジーであり、その非暴力主義抵抗はやがて英植民地や米国等世界に広まった)や、甘蔗糖に代わる甜菜糖栽培に酷使されたロシアの農奴も含めて19世紀になっても続いていたことなど、本書の原題のとおり「砂糖は世界を変えた」歴史を平易に説いている。
                               〔桜井 敏浩〕

(花田知恵訳 原書房 2017年3月 204頁 2,500円+税 ISBN978-4-562-05381-0 )

〔『ラテンアメリカ時報』2017年夏号(No.1419)より〕