外務省経済局 南 慎二アジア太平洋経済協力(APEC)室長講演会のご報告「アジアとラテンアメリカのバリューチェーンの統合」(2017年7月14日(金)開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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外務省経済局 南 慎二アジア太平洋経済協力(APEC)室長講演会のご報告「アジアとラテンアメリカのバリューチェーンの統合」(2017年7月14日(金)開催)

【演題】アジアとラテンアメリカのバリューチェーンの統合
【日時】2017年7月14日 15:00~16:30
【場所】フォーリン・プレスセンター
【講師】南 慎二 外務省経済局アジア太平洋経済協力(APEC)室長
【コメント】細野 昭雄 ラテンアメリカ協会副会長・JICA研究所シニア・リサーチアドバ
イザー
【参加者】約60名

■ APECは昨年、「アジアとラテンアメリカのバリューチェーンの統合」と題する研究プロジェクトを実施しました。本講演ではまず、南室長から当該研究プロジェクトの概要をご説明いただき、その後、プロジェクトに参加した当協会副会長である細野JICA研究所シニア・リサーチアドバイザーがコメントしました。
講演概要は以下の通りです。

■ APEC(アジア太平洋経済協力会議)の目的はアジア・太平洋地域の「貿易と投資の円滑化」である。WTOやOECDなど他の国際機関が交渉の場であるのに対して、APECでは交渉は行わず、「開かれた地域協力」と「強調的自主的行動」を特色とし、緩やかな政府間の枠組みによって様々な課題に取組んでいる。

■ APEC加盟国・地域は世界の人口の約4割、貿易量の約5割、GDPの約6割を占める世界の成長センターである。域内貿易比率は約6割に達し、EUよりも高い(2014年)。

■ 最近のAPECにおける議論は、2010年横浜会議で合意した「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」構想と成長の質を高める「APEC成長戦略」の実現にあるが、FTAAP構想はTPP交渉にも関係するものの、すぐにも貿易協定に入ることは無理であり、その底上げを図ることが当面の課題となっている。

■「バリューチェーンの統合」に関しては、詳しくはAPECのホームページにある報告書(注)を参照して欲しいが、2014年北京APECにおいてグローバル・バリューチェーン(GVCs)に関する10のワークストリームが提示され、日本はその中の⑥投資環境改善と⑧強靭性強化を担当することとなり、今回の報告書としてまとめられた。
(注)http://publications.apec.org/publication-detail.php?pub_id=1841

■ 東アジア・東南アジアとラテンアメリカの統合は進んでいるものの、バリューチェーンの面では不足しているので、2015年に「アジアとラ米・カリブにおける地域的バリューチェーンの統合強化に関する研究」を実施することが提案され、豪州、チリ、マレーシア、メキシコ、台湾、タイの協賛(ボランタリー)を得て、日本とペルーが研究に当たることとなった。

■ 報告書は、文献研究、官民対話、ワークショップを経て最終的には、①アジアとラ米のバリューチェーンの現状、②特定分野におけるアジアとラ米のGVCsの現状(サケ、大豆、自働車)、③文献調査及びインタビューによるGVCsを促進ないし抑制する要因の把握、④政策提言、の4項目で構成された。

■ アジアは1990年代から地域的バリューチェーンを形成し、各国の工業化と経済発展を促進する中で、FDI(外国直接投資)の授受共に増加させてきたが、貿易の面では近年、頭打ちとなっている。

■ ラテンアメリカの地域的バリューチェーンはコモディティ関連に集中し、製造業はメキシコとブラジルに集中している。アジアからの投資拡大により、GVC参入や技術移転に期待している。ラテンアメリカのGVCのケーススタディとして、チリのサーモン、ブラジルの大豆、メキシコの自働車を取り上げた。いずれも日本が深く関与している。

■ アジアとラテンアメリカのGVC統合強化に関する提言として、①インフラの改善、②貿易コスト削減と貿易円滑化、③透明性・整合性のある規則・規制の整備、④教育の向上、⑤金融へのアクセス、⑥外国資本への開放、が挙げられている。

■ 細野副会長からは以下のコメントがあった。①EUは制度によって統合を進めてきたが、APECは市場が統合を進めてきた、②アジアの地域的バリューチェーンはエレクトロニクスと自動車分野で1980年代から90年代にかけて拡大し、日本がリードしてきた、③アジアとラテンアメリカの間は2010年横浜会合までミッシング・リンクとなっていたが、「APEC成長戦略」によって「質の高い成長」が謳われ、戦略的ブループリント(2015-25年)が策定された、④対ラテンアメリカ投資(ストック)では日本が最大であり、ブラジル、メキシコ、チリの主要国でも日本がトップ投資国となっている、⑤サケ、大豆における日本の投資の成功例の他、中小企業の発展に果した日本の役割を強調したい、⑥日本はAPECのメンバー国である、メキシコ、チリ、ペルーのいずれともEPAを締結している。

■ 最後に、フロアーとの間で、①APECに新たなメンバーが加盟する可能性、②日本とメルコスールのEPAの可能性、③APEC加盟国中の濃淡(パプアニューギニア、ロシア等の位置づけ)について、等の質疑があった。

【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)


外務省経済局 南 慎二アジア太平洋経済協力(APEC)室長

細野副会長(右)と南室長(左)

講演会の様子