講演会のご報告「変貌する情熱大陸 =社会部記者が見たラテンアメリカ=」(2017年8月9日(水)開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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講演会のご報告「変貌する情熱大陸 =社会部記者が見たラテンアメリカ=」(2017年8月9日(水)開催)

【日 時】2017年8月9日 15:00~16:30
【場 所】日比谷国際ビルB1 会議室
【講 師】時事通信社 前サンパウロ支局長 辻 修平 記者
【来場者】約40名
本年6月末に帰国した時事通信社の前サンパウロ支局長、辻修平記者をお迎えし、社会部記者から見たラテンアメリカの現状について伺いました。講演の要旨は以下の通りです。

・日本のメディアの多くがブラジルのサンパウロを拠点に中南米のニュースを配信している(例外は、リオデジャネイロに拠点を置く読売新聞と共同通信社)。時事通信社もサンパウロ支局がラテンアメリカ35ヵ国をカバーする。

・ブラジルは1930年代以来の大不況の中で2014年のサッカーW杯、2016年のリオ五輪を開催した。W杯前には、大イベントに金をかけるより学校や病院が欲しいと大規模な住民デモが頻発した。デモがニュースになることでブラジル社会の格差や不況を世界にアピールしたいという狙いもあったようだ。一部に暴徒化するデモ隊もあったが、多くは平和裡に参加していた。
・財政難の中で開催されたリオ五輪は、当初国民の関心も低く、工事も予定通り進まなかった。だが直前で間に合わせ、会場運営も臨機応変に対応。結果的には非常に評価の高い大会となり、ブラジルの底力を感じた。

・ブラジルには巨大な日系社会があり成功者も多い。日本政府もサンパウロのジャパンハウス設立や日本語ボランティア増員など日系社会との連携に本腰を入れ始めた。ジャパンハウスは非常にスマートな展示で、現地メディアでも再三取り上げられるなど、日本で思われている以上に現地の関心は高い。

・一方、赴任中最も驚いた出来事はキューバと米国の国交正常化だった。キューバ外交の勝利と言えるだろう。キューバでは個人経営の店や民宿が急増し観光客も激増した。ホテルも足りない状況で、外国人がキューバ人の名義を借りて不動産を買う住宅バブルも起こっている。破格値の物件もあるが、システムが確立されていないためトラブルも多い。

・キューバの政治は揺るぎない社会主義体制で後継者もほぼ固まっており、来年のラウル議長退任後もその体制はすぐには変わらないだろう。一方で革命を知らない若い世代からは、現政権に対する冷静な声も聞かれた。インターネットやスマホの普及と相俟って、世代交代が意識の変化をもたらす可能性はある。

・キューバでの取材は取材先リストの事前提出を求められるなど、ビザ申請に時間がかかる。反体制活動家への取材時には政府から警告を受けたこともあった。逆に、フィデル死去の時には、世界中のキューバ領事館が休日もフル稼働し、1日でビザが下りた。

・中南米では長く続いた左派政権が退潮し、アルゼンチン等で右派政権が誕生している。ブラジルでは労働党のルーラ元大統領が窮地に立たされているが、依然貧困層からは強く支持されている。ベネズエラのチャベスのようなカリスマ指導者は不在だが、格差是正が進まなければ、また左派回帰の動きはあるかもしれない。

 講演の後、出席者との間で活発な質疑応答があり、ブラジルでの誘拐事件について、ベネズエラのデフォルトの可能性、資源ブームと左派政権の関係、アルゼンチンやペルーなどの中道右派政権の今後、米国のトランプ政権の影響、中国の存在感等、様々な質問にお答えいただきました。


時事通信社 前サンパウロ支局長 辻 修平 記者

会場の様子