『質素であることは、自由であること -世界でいちばん質素なムヒカ前大統領夫人が教えてくれたこと』 有川 真由美  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『質素であることは、自由であること -世界でいちばん質素なムヒカ前大統領夫人が教えてくれたこと』 有川 真由美 

2012年のリオデジャネイロでの国際環境会合で、ウルグアイのムヒカ大統領が行ったスピーチで「貧しいとは少ししか持っていないことではなく、限りなく多くを必要とし、もっと欲しがることである」という古人の言の引用などが評判になり、以後日本でも“世界でいちばん貧しい大統領”というキャッチコピーで紹介した類書が相次いで刊行されている(http://latin-america.jp/archives/19312 )。ムヒカ夫妻の質素な生活行動ぶりから“世界で一番貧しい”というキャプションが付けられたものだが、そもそもウルグアイはラテンアメリカで最も上位の高い国民所得を享受し、元大統領、現職国会議員で、小さからぬ農園等を所有していて、その質素なライフスタイルと世界の国々にある貧しさ、貧困とを混同させていることは否めないだろう。

そのムヒカ夫人についても、すでに『信念の女、ルシア・トポランスキー -ホセ・ムヒカ夫人激動の人生』(佐藤 美由紀 双葉社 2017年4月 http://latin-america.jp/archives/23602 )が出ているが、本書も「胸がすくようにカッコよくて、圧倒されるほど波乱の人生を歩いてきた人」(プロローグより)に会いたいと、2016年の夫妻の日本訪問から戻った直後に実現したインタビューでのルシア夫人の言葉に、筆者の解説、感想を付け加えたもの。紹介している彼女が発した言葉には、生活、人生について示唆するところがあるだが、政治家としての立場、信条、政治的立場、夫大統領とともに所属政党政権の功罪などは一切関心を示しておらず、書名どおりの思い込みからひたすら教えを引き出そうとしている。ちなみに、国会上院議員でもあるルシア夫人は、ムヒカ前政権下で就いていた独占企業社長時代の経費不正使用で辞任したセンディック副大統領の後任として、2017年9月に同国初の女性副大統領に就任した。

〔桜井 敏浩〕

(幻冬舎 2017年8月 202頁 1,100円+税 ISBN978-4-344-03164-7 )