『カストロ兄弟 -東西冷戦を生き抜いた強烈な民族主義者』  宮本 信生 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『カストロ兄弟 -東西冷戦を生き抜いた強烈な民族主義者』  宮本 信生

1991年3月から2年半駐キューバ大使を務め、その後チェコ大使に就き、退官後も外交評論等を執筆してきた元外交官が、1996年に出した『カストロ 民族主義と社会主義の狭間で』(中公新書)も踏まえ、キューバ革命の背景と成就から始め、1959年1月の革命政権の発足、対米関係の崩壊と対ソヴィエト連邦関係の構築、キューバ・ミサイル危機とその後の両国関係とキューバ経済の低迷、1974、75年の貿易や留学生派遣の最盛期を経て、ソ連の衰退と解体によりキューバも大打撃を受けるが、カストロ政権は崩壊しなかった理由、フィデルの弟ラウルへの政権移行、2015年4月の米国との復交、16年3月のオバマ米大統領の訪問、4月の第7回キューバ共産党大会までを詳しく解説している。

外務省時代から中国とソ連の対立を個人的研究課題としてきた(『中ソ対立の史的構造-米中ソの「核」と中ソの大国民族主義・意識の視点から』国際問題研究所 1989年)の著書もあり、1962年のソ連によるキューバへの核ミサイル配備をめぐるキューバ危機は、米ソ両大国が核ミサイル戦力の戦略的優位を競う段階で行われたことで、米ソがキューバの頭越しに妥協し、一時キューバとソ連との関係が冷却したこと、その後の1990年のソ連の崩壊後のキューバの内外政についても論じている。

巻末に、ラウル国家評議会議長に宛てた、人材育成等のためにも定年延長をという公開書簡、太田昌国氏(出版社の現代企画室主宰)との対談、フルート演奏家の夫人神崎 愛さんのラウル大統領〔原文のまま〕との親交についての補遺が付けられている。

〔桜井 敏浩〕

(美術の杜出版 2016年11月 287頁 1,500円+税 ISBN978-4-434-22321-1 )