『ハイン 地の果ての祭典 -南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死』 アン・チャップマン | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ハイン 地の果ての祭典 -南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死』 アン・チャップマン

 南米最南端のフエゴ諸島東部に住む先住民の一部族セルクナム族は、南極に近い厳しい自然環境の中で裸身に毛皮を纏っただけで移動狩猟生活をしていたが、1520年のマゼラン、1578年の英海賊ドレークの海峡通過の後、金採掘や羊の放牧のために侵入してきた西欧人と衝突、次第に追われてその子孫は今はアルゼンチン領に住んでいる。1999年には最後の生粋の女性は亡くなった。
 本書は若者たちが成人と認められるための通過儀礼であるその祭典“ハイン”について、米国の人類学者である著者がハインを実際に見たり参加したセルクナム族の人たちからの聴取と、1923年のハインに参加したドイツ人人類学者グシエンデ、それ以前に伝道のため入った神父などの記録や末裔たちの話を元に、地の果てで行われていた類い希な儀式を再現したものである。若者たちが仮面を付け全裸にボディペイントして精霊に扮した成人から拷問儀式を受け、狩人としての訓練を受けるハインの祭典を、その背景にある彼らの神話の紹介とともに社会とハインの祭典の詳細な儀礼の模様は興味深いが、本書に多数引用されているグシエンデの撮った精霊たちの写真は一見に値する。
                                 〔桜井 敏浩〕

(大川剛司訳 新評論 2017年4月 277頁 3,000円+税 ISBN978-4-7948-1067-0)

 〔『ラテンアメリカ時報』2017年秋号(No.1420)より〕