『ゲバラのHIROSHIMA』 佐藤 美由紀 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ゲバラのHIROSHIMA』 佐藤 美由紀

チェ・ゲバラが1967年10月にボリビアでのゲリラ戦で政府軍に捕らわれ銃殺されてから半世紀が経つが、相変わらずゲバラに関する本が次々に出版されている。本書はゲバラが、キューバ革命が成就して新政権が発足してまだ日も浅い1959年6月から90日間、キューバ親善使節団の団長としてアラブ連合(エジプト、シリア)やユーゴスラビア,インド、ビルマ、インドネシア、ガーナなど、当時米欧・ソヴィエト連邦に対して「第三世界」と呼ばれた国々へを歴訪した途中に日本へも立ち寄った時に、ゲバラのたっての願いで広島を訪れた時の資料や関係者へのインタビューや伝えられる証言等の記録、広島から投函した妻宛ての絵はがきや彼が撮った写真の存在などを掘り起こしたもの。前半は日本の工業力に学ぼうとするカストロ達新政府の期待、日本政府の冷淡な対応などと、原爆被災地であるHIROSHIMAへのゲバラの想い、ゲバラの学びと思索を綴っている。

後半は、カストロの蜂起からシエラ・マエストラでのゲリラ戦を経て1959年1月1日の革命軍のハバナ入城、米国資産接収の進行にともなう米国との関係悪化、国交断絶、1961年の米国傭兵によるヒロン湾侵攻等のカストロ政権転覆の試み、ソヴィエト連邦の接近、米国の海上封鎖とソ連の核ミサイル配備によるキューバ危機、そのキューバ頭越しによる米ソ間での収束の現代史を辿り、カストロ政府とゲバラの核兵器に対する考えの真意を述べた後、2003年3月のカストロ国家評議会議長の訪日の際に、彼のたっての希望で実現した広島平和記念公園・原爆資料館訪問、県市の歓迎昼食会でのスピーチとその後の核の脅威の警鐘発言、2008年5月のゲバラの二番目の妻との長女アレイダの広島訪問と彼女とのインタビューを紹介している。

締めくくりに2016年9月の安倍首相のキューバ訪問時に街頭で取材したヒロシマ・ナガサキについての知識、現代史教育の中での扱いを、日本でのNHKの調査での原爆投下日の正解率と比較している。「ゲバラに恋して-始まった」取材で、ヒロシマとキューバはつながっていた、そして今もつながっていると結んでいる。

〔桜井 敏浩〕

(双葉社 2017年8月 175頁 1,500円+税 ISBN978-4-575-31290-4 )