『ホーザ ブラジルからのおくりもの -日本でがんと闘ったバルの記録』  佐々木 郁子 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ホーザ ブラジルからのおくりもの -日本でがんと闘ったバルの記録』  佐々木 郁子

東京大学で長く図書館司書を務め、中国語会話や中国文学文献目録の共編著もある著者が、神戸のUCCコーヒー博物館を訪れた際に受付にいたブラジル人女性バル(Val)と会い、東京へ来ることがあれば連絡するよう話したことがきっかけで、東京の会社に転職した彼女と会い、辞めたいが会社の寮を出なければならないという話しを聞き家に入れ養子縁組をした。バルはその後24年間ブラジル銀行東京支店に勤務したが、2004年に乳がんが見つかり11年9か月の闘病生活、146日の入院生活にもかかわらず2016年10月に54歳で他界したが、その間の母娘の生活と闘病の記録。

バルは1962年にブラジルでイタリア系移民の裕福な家に生まれたが、父が事業に失敗し両親は離別したにもかかわらず夜間専門学校を卒業、その時期知り合った日系人の奨めで日本語を学び、家を出てからは日本人駐在員たちと交流し夫人たちにポルトガル語を教えたりしながらサンパウロの裁判所に勤めていたが、日本語弁論大会での選抜を経て日本留学の道が開け姫路に赴いた。そして卒業後UCCコーヒー博物館に職を得た際に著者との運命的出会いがあったのである。1995年に一緒にサンパウロを訪れ、バルの父にも会ったが、3週間のブラジル滞在予定はバルの希望で2週間に縮めて帰国した。

本書の大部分は著者のブログに載せられた娘の病気治療の日々の記録であるが、26年間にわたる母娘の情愛と絆が読む者にも伝わってくる。書名の「ホーザ」は薔薇(rosa)、バルが入院することになった少し前の母の日に贈ってくれ今も玄関の花瓶に挿してあるという。

〔桜井 敏浩〕

(幻冬舎メディアコンサルティング発行 幻冬舎発売 2017年10月 237頁 1,200円+税 ISBN978-4-344-91426-1 )