樋口 和喜 駐エルサルバドル大使講演会のご報告「エルサルバドル~政経事情から読取るビジネス機会~」(2018年3月15日(木)開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

樋口 和喜 駐エルサルバドル大使講演会のご報告「エルサルバドル~政経事情から読取るビジネス機会~」(2018年3月15日(木)開催)


【日時】2018年3月15日(木)15:00~16:30
【場所】田中田村町ビル5F
【演題】エルサルバドル~政経事情から読取るビジネス機会~
【講師】樋口 和喜 駐エルサルバドル大使
【参加者】約40名

 樋口大使は長年メキシコを中心にラテンアメリカでビジネスマンとして活躍の後、2017年8月に大使として赴任された。講演内容はその副題にあるように、エルサルバドルの「ビジネス機会」に焦点を当て、在エルサルバドル日本大使館の「ビジョン」を説明、投資するなら「今です!」と熱いメッセージで締めくくられた。詳細は協会ホームページに掲載する講演資料をご参照ください(会員のみ)。

1.内政
・国会が与野党同数で政策決定が成されていなかったところ、3月4日の国会議員選挙で与党(FMLN;左派)が議席を大幅に減らした(31→23)。
・この結果は2019年2月に予定されている大統領選挙に影響するだろう。

2.外交
・現政権は親キューバ、親ベネズエラ。台湾と国交を有するが、中国が製造業投資やインフラ投資で攻勢をかけている。
・米国は、2001年のエルサルバドル大地震以降続けてきた人道的在留許可(一時保護資格:TPS)の延長打切りを決めた。同国の経済は米在留者からの送金に大きく依存しており、今後の動向が注目される。

3.経済
・エルサルバドルは、貿易収支の赤字を家族送金で補填している(在米エルサルバドル人約300万人、送金額50億ドル)。現状、家族送金は個人消費に用いられ、投資に回らない。
・産業基盤は脆弱であり、伝統産業はコーヒーと砂糖である。日本大使館は産業再生・産業振興策を経済閣僚会議や民間シンクタンクに提言している。
・首都サンサルバドルにSICA(中米統合機構)本部があり、エルサルバドルは物流・通関などにおける地域協力を積極的に推進している。

4.日本との関係
・エルサルバドルは「中米の日本」といわれ、親日的である。
・日系事業投資会社は8社:東洋紡、YKK、INSINCA(東レ・蝶理・三井物産・岐セン)、矢崎総業、メタルワン、京セラ、伊藤忠、リコー。但し、日本人が駐在しているのは2社(東洋紡とYKK)のみ。支店登録3社(NEC、日本工営、ニプロ)。
・日本の主な輸入品はコーヒー、日本からの輸出は自動車、カメラ、医療機器等。

5.日本との経済連携
・現在、EPA(経済連携協定)あるいは二国間投資協定を検討中。
・投資機会:地熱発電、太陽光発電、ラ・ウニオン港ターミナル運営(官民連携)、医療都市開発、リサイクル事業、自動車部品製造(Tier2、Tier3)

6.投資ガイダンス
・日本大使館ホームページに掲載しているので参照されたい。

7.在エルサルバドル日本大使館のビジョン:360°のDiplomacy
・外交政策(3-Juntosの実行、産業政策の提言)
・広報文化(大使館ビジョン等の戦略的発信、文化・スポーツ交流、親日家・知日家の発掘、拡大、その他メディア等を通しての発信)
・邦人・企業支援(投資機会の発掘など)
・政経分析(人脈構築、ビジネス機会創出推進、政治経済治安月報の内容充実・発信)
・開発協力(防災、環境保全、官民連携等)
・コンプライアンス遵守、CS/ES(顧客・従業員満足)の追及

8.最後に(今です!)
・中米・メキシコ市場を狙った投資は今;在メキシコ日系企業に定期的に情報発信を行う。
・日本大使館は日本企業の窓口、対外的に「物申す館」として政府、民間、他国大使館に提言し、実行してゆく。

 質疑の冒頭では、駐日エルサルバドル大使のマルタ・リディア・セランディアシスネロス氏より挨拶と講演に対する補足があり、樋口大使にエールが送られた。その他具体的な投資機会、大学生の受入れ・派遣、家族送金の仕組み、トランプ政権との関係等について質疑がなされた。

【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)

「エルサルバドル 政経事情から読み取るビジネス機会」(PDF)

樋口 和喜 駐エルサルバドル大使 作成


樋口 和喜 駐エルサルバドル大使

会場の様子(マルタ・セランディア駐日エルサルバドル大使がご挨拶)