『エルドラードの孤児』  ミウトン・ハトゥン | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『エルドラードの孤児』  ミウトン・ハトゥン

 東京外国語大学大学院でブラジル文学・文化を講じる武田千香教授が編纂する「ブラジル現代文学コレクション」の最初の刊行(現時点では6点が既刊・配本予定)。著者は1952年アマゾン河中流の大都市マナウスでレバノン系の両親から生まれ、スペイン、フランスで高等教育を受け、アマゾナス連邦大学、カリフォルニア大学で教職を務めた。
 マナウスは19世紀後半に欧米での自動車・自転車の利用拡大でタイヤ用に生じたゴム需要の高まりにより、周辺の密林で採取する天然ゴムの輸出で財を得た。本書は、このゴムブームに乗って財産を築きながら、1912年に競争に敗れ急死したアルマンドとその息子で根拠のない夢を追い求めて親の資産を食い潰してしまったアルミントの生き様を、マナウスとアマゾナス州第2の都市パリンチンス(マナウスから船で20時間余かかる。旧名ヴィラ・ベーラ・ダ・インペラトリス、毎年6月の「ボイ・ブンバ」の祭りで知られている)を舞台に、16世紀に黄金の国を夢見て南米に侵入しインカを征服したピサロ軍の一員のオレリャーナが、数十人の部下とともにこの大河を下り、途中ギリシャ神話の女人族アマゾネスと見紛う女戦士を目撃したというエルドラード伝説に始まる神話世界と、アマゾンで近代に生きたアルマンド父子と人々の生活とを交錯させた家族史的な物語。
                                〔桜井 敏浩〕
 (武田千香訳 水声社 2017年11月 188頁 2,000円+税 ISBN978-4-8010-0291-3)