山田 彰 駐ブラジル日本国特命全権大使 講演会のご報告「ブラジルの現状と中南米地域との連携」(2018年5月14日(月)開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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山田 彰 駐ブラジル日本国特命全権大使 講演会のご報告「ブラジルの現状と中南米地域との連携」(2018年5月14日(月)開催)

【日時】2018年5月14日(月)16:00~17:30
【場所】田中田村町ビル8F
【演題】ブラジルの現状と中南米地域との連携
【講師】山田 彰 駐ブラジル日本国特命全権大使
【共催】ラテンアメリカ協会、日本ブラジル中央協会、日智経済委員会日本国内委員会、日本ペルー経済委員会、日亜経済委員会
【参加者】約130名

【1.最近のブラジル政治情勢】
テメル大統領の諸政策(労働法改正など)は玄人受けしており、マーケットの高い評価を得ている。2015年、2016年とマイナス成長だった経済は2017年にプラスに転じ、2018年についてIMFが2.3%という見通しを出している。

テメル大統領は高齢で、ラバジャットに絡む政治不信のシンボルでもあるため、大統領選挙への再出馬はないとされてきた。ただ、経済が回復するにつれ、出馬するかもしれないとの見方が一部に出ている。大統領は5%と極めて低い支持率であり、再出馬の可能性は低いと思われるが、ブラジルの政治は「一寸先は闇」であり、何があっても不思議ではない。

最大の課題ともいえる年金制度改革や税制改革については、当初2017年中に何とかなると思われたが、結局、テメル政権下での実現は難しくなっている。

貧困層が「神様」と崇め、最大の支持率を集めているルーラ元大統領の出馬の可能性は、二審判決で有罪となった今では難しい。最高裁判所は4月6日、ルーラ側から出されていた人身保護令を6対5で否決し、司法の権威を保つと共に、再出場の道を断ったといえる。

【2.大統領選挙の展望】
2年におよぶ政治・経済危機により、世論は既存の政治家に対して嫌悪感を抱いている。現在、本命不在で、史上最も混沌とした選挙になると予想されている。

(飽くまで個人的な意見との前提で)ルーラ元大統領を除く候補を右派、中道、左派と分けてみると;

①右派のボルソナーロ候補がルーラに次ぐ支持を集めているが、政界のアウトサイダーであり、政界のメインストリームは彼を批判し、メディアも厳しい見方をしている。同氏はどこかの大統領と同じくSNSを駆使している。自分(山田大使)が会った時は、落ち着きがあり、しっかりしたものの見方をする「普通」の人との印象だった。2018年2月に日本(および台湾、韓国)を訪問した。ボルソナーロ氏は中国嫌いで、日本に対しては好印象を持っている。少数政党であり、全国区での当選はかなり厳しいと思われるが、過去に既存の常識が覆された例もある。

②中道右派では、PSDB(ブラジル社会民主党)のアルキミン・サンパウロ州知事が最有力。2006年の大統領選では決戦投票まで行った。他の候補と比べるとカリスマ性が有る。中道右派には沢山の候補がいて、最終的には30人ほどを数える。MDB(ブラジル民主運動)はまだ候補を決めていないが、テメル大統領(MDB)、メイレレス前財務大臣の名が挙がっているものの、いずれも支持率が低い。メイレレス氏は財務大臣としての評価は高いが、政治家としての面白味についての見方はさまざまである。

③左派には3名の候補がいる。一人はマリーナ・シルヴァ元環境大臣で、支持率は高いが、それを拡げることが出来ないでいる。シロ・ゴメス元国家統合大臣はマリーナより支持率では上に立っている。前与党のPT(労働者党)にはアダッジ元サンパウロ市長の存在があるが、PTの候補と成り得るかどうかは不透明。

ブラジルには35の政党があり、うち26政党が議席を有しており、議員による政党移動も盛んであるため、10月7日の選挙までにどういった動きがあるかは分らない。

【3.経済の現状】
2015年、2016年と後退した経済は2017年にプラス1%、2018年についてはIMFが2.3%と予測している。
インフレは歴史的低水準にあり、2月には目標レンジの下限(3%)をも下回る年率2.8%となった。
貿易と投資は依然低迷している。

【4.日本との関係】
メルコスールとEUおよび韓国とのFTAは交渉中で、カナダとの交渉が開始されている。以前、日伯EPAが検討されたこともあったが、現在ではメルコスール全体として日本とのEPA締結を望んでいる。このことは経団連の日伯経済合同委員会や日伯賢人会議などで話し合われてきた。ブラジルの民間部門は韓国よりも日本との連携を望んでいるし、日本の民間もポジティブである。

近年、ブラジルにおける日本の存在感が薄くなっているが、中国の進出が加速する中、ブラジルはより日本に来て欲しいと考えている。自分(山田大使)は中南米局長、メキシコ大使、ブラジル大使を歴任する中で、中南米の日本に対する信頼感が強いことを感じてきた。

昨年出来たジャパンハウスは、日本の最先端の文化を紹介しており、4月までに70万人が来館した。
2018年は日本人移住110周年に当るが、7月に真子内親王が訪問される予定となっている。

【5.講演後】
司会の堀坂氏から安倍首相の対中南米外交の指導理念となっている“Juntos”(中南米諸国と「共に」)の今後はどうかという質問が出されたほか、フロアから、①トランプ政権の中南米に対する姿勢、②TPPと日・メルコスールEPAの関連、③日伯賢人会議、などの質問が出された。

【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)

「ブラジルの現状と中南米地域との連携」(PDF)

山田彰 駐ブラジル日本国大使 作成


山田 彰 駐ブラジル日本国特命全権大使

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