『カリブ - 世界論 植民地主義に抗う複数の場所と歴史』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『カリブ - 世界論 植民地主義に抗う複数の場所と歴史』

 フランス領で海外県とされたカリブ海グアドループ島は、フランス本土の人たちからはリゾート地としてのみ認識されていたが、2009年1月に物価高に抗議するゼネストが勃発した。欧州の冬でカーニバルもあるハイシーズンの12月から4月のストは経営者も住民も大きな痛手を負うことになるが、物価高への怒りは2月にはマルティニック島にも伝播した。このゼネストは、07年以降の世界金融危機を契機にしたものであるにせよ、観光以外にほとんど生産手段をもたない経済社会構造に起因する長年の不満が一気に爆発したものであるが、そのインパクトは海外県の新たな局面を印した。
本書はこの知られざる社会運動を理解するためにフランス海外県の特殊な政治・経済的状況、このゼネストに先行した様々な運動や政治闘争の系譜を分析するとともに、普段知られることが少ないフランス領カリブの歴史的展開をたどり、独立運動やクレオール語復権運動、カリブ文学の開花などに希望を見出し、「植民地主義」の権力や支配体制への直接的な抵抗とは別な形で抗うフランス領カリブの現在の姿を詳細に記述している。
〔桜井 敏浩〕
『ラテンアメリカ時報』2014年春号(No.1406)より

(中村 隆之 人文書院 2013年8月 438頁 4,000円+税)