『解釈する民族運動 -構成主義によるボリビアとエクアドルの比較分析』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『解釈する民族運動 -構成主義によるボリビアとエクアドルの比較分析』

 欧州諸国による植民地化以降、収奪され抑圧され、差別されてきた先住民は、不平等な共存関係への不満から度々反乱を起こしたが、現在に至るまでその劣位は続いている。20世紀に入って差別を克服する社会運動が各地で起きたが、先住民運動が関わる問題領域は多岐にわたり同質視はできず多様性を見出さねばならない。本書は、先住民運動の選挙参加と制度外的権力獲得(クーデタや並列する政治機構の確立)に着目し、ボリビアとエクアドルの先住民運動の行動差異に着目して、その行動の方向性を規定する規範、すなわちアイデンティティを共有する集団にとって相応しい行動の基準の違いを論じたものである。
本書は両国先住民運動の先行研究を批判的に検討し、著者が採った構成主義アプローチを説明し、事例研究ではボリビアとエクアドルのそれぞれ高地、低地での運動の基礎情報と選挙参加などと制度外的権力獲得についての姿勢を分析している。結論として、それぞれの事例での多様性を整理し明らかにすることで、研究アプローチが有効だったことを示し、これまでのラテンアメリカ先住民運動研究がパターン化して何か一定の性格を持つとの前提を置いていたことに再考を促し、また先住民運動と民主主義の関係の親和性有無が単純に楽観/悲観どちらと言い切れるものではなく、また制度設計により民族を誘導して民主主義を持続させるのにも限界あり、変化する運動の規範を理解し、特に支配的立場にある者が運動と具体な文脈に即して考察することが求められているとしている。
両国やベネズエラ等新自由主義に反対する左派政権が多い中で、政権と民族運動の関係を単純・パターン化して見ることの危うさについて示唆に富んだ研究書である。
〔桜井 敏浩〕
『ラテンアメリカ時報』2014年春号(No.1406)より

(宮地 隆廣 東京大学出版会 2014年1月 352頁 7,000円+税)