『遊牧・移牧・定牧 -モンゴル・チベット・ヒマラヤ・アンデスのフィールドワークから』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『遊牧・移牧・定牧 -モンゴル・チベット・ヒマラヤ・アンデスのフィールドワークから』

 アンデス、ヒマラヤ、チベット高地やモンゴルなどで、約40年間牧畜社会・文化の現地調査を続けてきた文化人類学者(愛知県立大学、現放送大学教授)の研究成果の紀行記風集大成。牧畜の事例を遊牧、移牧、そして中央アンデスのリャマ等の定牧の形態別に、それぞれの実態と牧民の生活、変化を述べ、アンデスでのビクーニャを捕らえ毛を刈った後放つ「殺さない狩猟 チャク」を、先人の自然との共生・利用の知恵として紹介している。
 これらフィールド調査に基づき、モンゴルとチベットの遊牧の比較、移農との関連、水平移動が典型である遊牧と規則的な上下移動の移牧との間は境界線が引けないこと、アンデスの定牧・移農も東と西で差異があることなど新たな牧畜論を論じている。さらに市場経済化や家族・地域社会ネットワークの変化への適応、伝統的な交易の衰退、さらにテロリストとの内戦等の社会変革や民主化と市場経済移行が、これまでの牧畜社会での互酬・再分配・市場交換システムを新たな再分配の仕組みへ変える動きがあると指摘する。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2014年夏号(No.1407)より〕

(稲村 哲也 ナカニシヤ出版 2014年3月 390頁 3,500円+税)