【季刊誌サンプル】チリ、ボリビア、メキシコのリチウム戦略 小口 朋恵(JOGMEC金属企画部調査課 課長代理) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】チリ、ボリビア、メキシコのリチウム戦略 小口 朋恵(JOGMEC金属企画部調査課 課長代理)


【季刊誌サンプル】チリ、ボリビア、メキシコのリチウム戦略

小口 朋恵(JOGMEC金属企画部調査課 課長代理)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2024年夏号(No.1447)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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チリ、ボリビア、メキシコのリチウム戦略 小口 朋恵(JOGMEC金属企画部調査課 課長代理)

はじめに
USGS(米国地質調査所)が発行する「Mineral Commodity Summaries 2024」によると、世界のリチウム埋蔵量は2800万純分トンで、比較的世界に広く分布する資源だが、世界最大の埋蔵量を誇るのはチリ(930万純分トン)となっている。南米(アルゼンチン、ブラジル、チリ)の埋蔵量を足すと、リチウム埋蔵量全体の半分近くを占め、リチウムの資源開発において世界が南米に注目する理由が窺える。
上記USGSによると、世界のリチウム生産量は18万純分トンで、豪州が世界最大の生産国、チリ(4.4万純分トン)は第2位につけている。これにアルゼンチンとブラジルの生産量を足すと、南米の生産量は世界全体の4割近くを占める。このように南米はリチウム資源開発において重要なポジションを占めており、将来のEV(電気自動車)の普及を見据え、EVに搭載されるリチウムイオン電池の原料として需要増加が予想されるリチウムの増産や新たな開発を考えるにあたって、重要な地域といえる。
本稿では、リチウムの生産量・需要量を踏まえ、リチウム資源を抱える南米各国の資源開発政策を俯瞰しつつ、各政策の鍵となる点、消費国側の動向についても考えたい。

世界のリチウム生産量・需要量
リチウム資源の形態は、主に塩湖のかん水と鉱山で採掘される鉱石の2種類あり、北米やメキシコにはリチウムを含有する粘土資源もあるが、粘土からのリチウム抽出は商業生産が行われていない。チリやアルゼンチンの南米で生産されるリチウムの原料は、塩湖の「かん水」と呼ばれる地下水で、製造方法は、塩湖からくみ上げたかん水を広大なプールで1~2年かけて蒸発させ、濃度を高めて炭酸リチウムを生産する。塩湖の立地が雨の降らない乾燥地帯であることを活かした製造方法のため、コストが比較的安く済むとされている。
リチウム生産において過去の世界生産量1位はチリであったが、EVが普及し出した2017年、豪州で新たなリチウム鉱山が開山したことで豪州の生産量が急増し、チリは豪州に追い抜かれた。両国とも2019~20年は一時減産したものの、コロナ禍の2021年は回復、その後も順調に生産量を伸ばしている。リチウムの用途には、伝統的に窯業やガラスなどがあり、これらは概ね毎年変わらない一定の需要量のため、生産量や需要量が増えている分は全てリチウムイオン電池向けの需要増加分だと考えられる。

将来、リチウム需要量は現在の需要量の数倍相当になるとの予測があり、これを満たすためにはこれまでのような増加幅で生産量を増やす必要がある。そうなると、この生産量の伸びが今後も継続していくのか、この需要を賄う増産は可能か、新規プロジェクトが立ち上がっていけるのか、という疑問が生じてくる。
現在チリでリチウムを生産しているのは、旧国営のチリSQMと米国Albemarleで、この2社で世界生産量2位という地位を保ち、現在も生産量を伸ばしているが、生産にあたって全く問題がないわけではない。むしろ、かん水を地下からくみ上げて天日蒸発することによる干ばつや生態系、生活用水等への影響、これ