【季刊誌サンプル】再来するゲームチェンジャー? ―シェインバウム新政権、トランプ2.0に備える「バヒオ」地区 Adolfo Laborde Carranco(メキシコ経済省前駐日代表、CIDE 教授) 林 和宏(京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター 客員研究員) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】再来するゲームチェンジャー? ―シェインバウム新政権、トランプ2.0に備える「バヒオ」地区 Adolfo Laborde Carranco(メキシコ経済省前駐日代表、CIDE 教授) 林 和宏(京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター 客員研究員)


【季刊誌サンプル】再来するゲームチェンジャー?―シェインバウム新政権、トランプ2.0に備える「バヒオ」地区

Adolfo Laborde Carranco(メキシコ経済省前駐日代表、CIDE 教授)
林 和宏(京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター 客員研究員)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2024年秋号(No.1449)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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再来するゲームチェンジャー? ―シェインバウム新政権、トランプ2.0に備える「バヒオ」地区 Adolfo Laborde Carranco(メキシコ経済省前駐日代表、CIDE教授)、林 和宏(京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター 客員研究員)

はじめに
メキシコ初の女性大統領となるクラウディア・シェインバウム前首都メキシコシティ市長(国家再生運動[MORENA])が大方の予想通り圧勝し、2024 年10 月1 日に新政権が発足した。シェインバウム候補が、前任者ロペス・オブラドール(通称AMLO)の掲げる「第四次転換(4T)」継承を掲げた事実、また、退任直前まで60%を超える支持率を誇ったAMLO人気を考えると、今次選挙結果は広くメキシコ国民がAMLO 政権6 年に「優」の評価をつけ、その路線継続をシェインバウムに託したと理解することができるのではないか。El Financiero 紙(2024 年11 月22 日付)が報じるように、大統領就任後2 か月弱でのシェインバウム支持率は当初60%から70%に上昇するなど、好発進を見せている。
無論、司法改革を中心とするAMLO 型改憲論議の継承は対ドルでの通貨ペソ下落の一因となり、隣国米国ではトランプ次期大統領が就任以前より関税外交の再開を高らかに宣言するなど安閑とはしていられない。思い返せば就任直後のAMLO もトランプの関税外交に押され、国内治安保持のために結成した「国家警備隊」を押し寄せる中米移民キャラバンの制圧にあてた苦い経験がある。AMLO が口を極めてその「内政干渉」を批判したように、シェインバウム政権がトランプ2.0 にどう向き合うかにつき1300 ともいわれるメキシコ進出日系企業は関心を示している。第一次トランプ、AMLO 両政権成立をメキシコ・バヒオ地区(el Bajío)で観察した執筆者が、2024 年時点の同地区で目撃する既視感や新規な点につき記述したい。

継承されるAMLO改革
シェインバウム大統領は、選挙運動期間中も前任であるAMLO 政策の継続を主張してきた。その公約を見ると、参加型民主主義を根底に据えた公選ポストの罷免や再選禁止といった「司法改革」に接続するような提案とともに、マヤ鉄道に代表されるAMLO のメガプロジェクト継続を中心に、鉄道・港湾・空港・高速道路の整備などインフラ投資が明記
されている。同様に、農産物の自給率アップやエネルギー資源の国内消費の重点化に対応した電力公社(CFE)や石油公社(PEMEX)の参加強化といったナショナリスト的政策も、そのまま継承されている。環境問題への対応や女性の地位改善などシェインバウムならではの主張も認められるが、国民皆年金、公共医療・教育制度の拡充、低所得階層向けの住宅建設、最低賃金の年率11%改定など、インフォーマルセクター、低所得者層・労働者とあわせてエスニックマイノリティなどの「弱者」を救済の対象とする社会派の側面を前政権より引き継いでいる。
こうした公約に従いシェインバウム大統領は2024年12 月4 日、(北部国境地帯フリーゾーンを除く)最低賃金248.93 ペソ/日を278.80 ペソ/日へと2025