【季刊誌サンプル】ラテンアメリカのハブ パナマ 松永 一義(在パナマ大使) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】ラテンアメリカのハブ パナマ 松永 一義(在パナマ大使)


【季刊誌サンプル】ラテンアメリカのハブ パナマ

松永 一義(在パナマ大使)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2025年春号(No.1450)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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ラテンアメリカのハブ パナマ 松永 一義(在パナマ大使)

在パナマ大使公邸からは、毎朝、パナマ運河の通行を待つ多数の大型船舶の行列が見渡せる。この光景は、パナマ運河が世界貿易の約5%、年間約1万4000隻の船舶の航行を支え、世界の物流の生命線として機能していることを強く実感させる。
世界貿易におけるパナマ運河の存在感
1914年の開通以来、パナマは大西洋と太平洋を最短距離で結ぶ重要な航路である。運河を利用することで、米国東海岸からアジアへの海上輸送距離は約1万3000kmから8000kmに短縮され、時間にして約8〜10日、コストでは最大で20%以上の削減が可能とされている。
2023年には、異常気象による記録的な渇水が続き、ガトゥン湖の水位が過去最低レベルにまで低下した。この影響で、通航可能な船舶数は通常の1日35〜36隻から最大で22隻に制限され、世界のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼした。
さらに2024年末、米国大統領が運河の「安全保障上の重要性」を強調し、通航料改定にも言及したことで、運河の管理・運用は再び国際的な関心を集めている。パナマ政府はこれに対応するため、2025年以降の通航枠拡大とインフラ強化を急ピッチで進めている。
米中対立下での港湾管理と地政学リスク
パナマ運河の両端には5つの主要な港湾があり、そのうちのバルボア港(太平洋側)とクリストバル港(大西洋側)の2つの港は、香港系企業「ハチソン・ポート・ホールディングス」の子会社が運営している。この点について、米国は安全保障上の懸念を強く示している。
この状況を受け、パナマ政府は米国や日本などとのインフラ、防災、安全保障分野での協力に期待を寄せている。特に日本は、運河周辺の交通・インフラ・物流や港湾安全システムの導入などを通じ、安定運用に向けた国際的パートナーとしての役割が期待されている。
80億ドル規模のインフラ投資と脱炭素への取り組み
パナマ運河庁(ACP)は、今後10年間で約80億ドルを投資し、持続可能で競争力のある運河運営を目指している。この中には、運河の水資源確保に向けた新規ダム建設、既存水路の近代化、さらにはデジタル技術による通航管理システムの高度化が含まれている。
加えて、ガスパイプラインや液化ガスの貯蔵・再積載施設の整備も進行中である。これにより、LPG(液化石油ガス)運搬船が運河を通らず、パイプラインで太平洋側に直接輸送・再積載できるようになり、通航枠に余裕が生まれる。その結果、大型コンテナ船や現在予約優先順位の低いLNG(液化天然ガス)