『ラテンアメリカ 越境する美術』 岡田 裕成 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ラテンアメリカ 越境する美術』 岡田 裕成

 征服という形で異文化が出会い、ラテンアメリカの美術が始まった。以降スペインに倣った植民都市の建設により景観が作り変えられ、初期のフランシスコ会の宣教師たちに改宗先住民画家も加わって布教のために壁画などの制作を進め、ユートピア建設の夢を描いた。植民地社会が成熟する過程で先住民の文化は否定され破壊されたが、伝統文化は変容しつつも継承され、強制されたカトリック信仰との異文化のせめぎ合いの中で存在し続けた。旧世界とクリオーリョ、先住民の造形文化という三つの要素がラテンアメリカ美術を創造し、特に副王領の置かれたメキシコとペルーを中心に成熟した。
 独立によって誕生した新生国家は、美術によってその歴史と地域性を表現しようとしたが、一方で豊かな民衆美術も力強く育っていった。独立後宗主国を通すことなく直接欧州との行き来が増え、そこでの新しい動きが入ってきた第一のグローバル化は、ラテンアメリカの芸術に多大な影響を与えた。またインディヘニスモの高まりを含めアイデンティティの模索、民衆芸術の評価など、美術の世界での時代の変化はやがてグローバリゼーションの進展とともに「アメリカの再発見」を指向する。
現地フィールドワークの成果を交え多数の図版を示しつつ、美術史の観点から大航海時代以降のラテンアメリカ近代史を論じた極めて興味深い労作。

〔桜井 敏浩〕

(筑摩書房 2014年9月 352頁 2,700円+税)
〔『ラテンアメリカ時報』2014年秋号(No.1408)より〕