『一粒の米もし死なずば』  深沢 正雪 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『一粒の米もし死なずば』  深沢 正雪

1908年に日本からの最初の組織的なブラジル移民が笠戸丸で入ってから5年後に、食糧が不足していた日本に米を供給することを夢見たイグアッペ植民地が拓かれた。サンパウロ市南西約200kmに設けられたこのレジストロ地方の植民地建設には、桂 太郎はじめ明治時代の政治家や実業界の大物も関わった国策でもあったのである。だが、試行錯誤した米作はうまくいかず、34年にセイロン島からこっそり持ち込まれた紅茶により戦後ブラジルでの「紅茶の都」といわれるまでに至ったものの、20世紀末から今世紀に入って為替の変動により国際競争力が衰え、現在では一貫生産茶家は天谷製茶だけになったという、波瀾万丈の歴史があるのだが、なぜか公式日本移民史ではこれまであまり言及されてこなかった。
本書はサンパウロの邦字紙『ニッケイ新聞』の編集長が、日本移民のレジストロ地方入植100周年を迎えたのを機に、100超の文献資料に目を通し現地に足繁に通って、同紙に9か月間にわたって連載したルポルタージュ127本を集大成した、波乱万丈の苦闘の歴史とその百年後の到達点までの気骨ある明治の日本人南米移民史の舞台裏にせまる労作。

〔桜井 敏浩〕

(無明舎出版 2014年月 219頁 1,900円+税)

〔『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号(No.1409)より〕