『メキシコ先住民の反乱 敗れ去りし者たちの記録』  山﨑 眞次 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
Japanese English

『メキシコ先住民の反乱 敗れ去りし者たちの記録』  山﨑 眞次

 歴史は勝者が語るものであり、不都合な真実、敗者の声は勝者に隠蔽され貶められてきた。本書はメキシコ各地で19世紀に起きた反乱を主に敗者の声を、古文書の断片や歴史証言の矛盾等の手懸かりなどから考察しようとしたもので、1847年から50年間続き20万人以上の死者を出したユカタン半島でのカスタ戦争、メキシコ市郊外チャルコ地域で1868年に勃発し、ベニート・フアレス政権への全面的蜂起になったフリオ・ロペスの反乱、1857年から73年の間続いたインディオの血を引くマヌエル・ロサダが率いたハリスコ州の反乱、北部ソノラ州で1533年のスペイン軍侵入以来19世紀なかばから20世紀初頭に至るまで政争・革命に翻弄され、1900年には戦闘により捕虜になった住民がユカタン半島等に奴隷として売られるまでされてきたヤキ族の反乱を取り上げている。
 これらの先住民による反乱は、アセンダド(大農園主)による先住農民から土地を強奪、先住農民の共同体の解体、富裕な白人農園主と貧しい農民との間の土地紛争に起因するが、著者は最後にこれら4つの反乱の地域別特徴に注目し、反乱が長期にわたった理由を7項目の特性を比較することにより、それぞれの反乱の特徴を明らかにする。スペイン王室はアシエンダや鉱山を経営するクリオージョ階層の経済的権益拡大には積極的でなく、人頭税を納める農民を保護することで均衡を図ったのに対し、独立後政治的指導者となったクリオージョの政治家・官吏はアシエンダや鉱山主が多く、19世紀以降政治権力と経済権力が一体化し、むしろ農民を搾取する構造が支配的となり、隷従するか武装蜂起かの二者選択から反乱が起きたと指摘している。
                              〔桜井 敏浩〕
(成文堂 2015年1月 222頁 3,400円+税 ISBN978-4-7923-7102-9 )

〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕