『日系移民社会における言語接触のダイナミズム -ブラジル・ボリビアの子供移民と沖縄系移民』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『日系移民社会における言語接触のダイナミズム -ブラジル・ボリビアの子供移民と沖縄系移民』

 日本人移民の現地での言語接触と言語移行についての研究書は少なくないが、本書は戦前のブラジル移民の半数近くを占めた子供と、ブラジルやボリビアで多い沖縄からの移民を取り上げ、長期にわたる現地での言語生活と談話の録音調査、文献の掘り起こしの集成に基づき分析したものである。
 子供移民は日本語・ポルトガル語という二つの言語文化にあって、一世大人とも現地生まれの二世とも異なる自らのアイデンティティを模索してきた。沖縄系移民については、日本人(沖縄県人)、ブラジルの日本人(コロニア人)、ブラジルのウチナーンチュ、さらには「汎ウチナーンチュ」になるというエスニックアイデンティティの変遷を経てきたことを、沖縄方言も含めて彼らの言語接触の経験を考察している。
資料編にはボリビアの沖縄系移民コミュニティにおける談話録音調査の一部をDVD-ROMで聞くことが出来るようになっており、近年の日本への長期デカセギと日本での子弟教育、現地での高学歴化(大学進学)という変化までも追っていて、これまでの北米の日系移民研究成果を持ち込んでの南米調査・分析と一線を画した研究になっている。
                                 〔桜井 敏浩〕

 (工藤 真由美・森幸一 大阪大学出版会 2015年8月 318頁 6,500円+税 ISBN978-4- 87259-512-3 )
 
〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕