『移民の詩 -大泉ブラジルタウン物語』  水野 龍哉  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『移民の詩 -大泉ブラジルタウン物語』  水野 龍哉 

群馬県大泉町は、町民約4万人のうち外国人比率が15%、その7割は日系を中心としたブラジルが占める、日本各地に20カ所点在するブラジル人集住地の中でも“ブラジル的濃度が高い町”である。バブル期の深刻な人手不足への対応として1990年に施行された入国管理法改正により、日系三世まで定住者としての資格を得ることが出来るようになり、自動車・電器機器工場の多い大泉町の経営者は行政と足並みを揃えて入管法改正に合わせ、日系人日系人労働者受け入れ徴募体制を作り上げたのである。

フリージャーナリストが大泉町に通い様々な在住ブラジル人の人たちに日本へデカセギに来た事情、生活の実情や生き様を聞き、周囲の日本人社会との軋轢、両者の間隙を埋めようとする観光協会への立ち上げによるサンバによる町興しと祭りに参加したダンサーたち、日本の学校でのいじめや教会での癒やし、日系ブラジル人と日本人が協働しての清掃活動等社会奉仕を通じての共生の努力、在日ブラジル人学校日伯学園の設立、日系人への社会保険手続き等の法務支援、町長の奮闘、日本人の本音と建前の使い分けへの戸惑いや付き合いの難しさなど、苦労も多い。在日日系人のゴミ出しや生活マナーの差違、地方納税未納の多い問題、子供たちの不就学・不登校、ブラジルに逃げ帰った犯罪人の引き渡し・処罰法制の不備、偏見・差別、貸し金取り立てや麻薬、賭博等に日系人ギャング、ブラジル料理店の経営に乗りだした日系人や中日ドラゴンズのプロ野球の選手にまでなった野球少年、ブラジルに戻った人たちなど、多岐にわたる取材から、ブラジルのおおらかな風土に育まれ、日本人的な気質に加えてブラジルの楽天性とチャレンジ精神という長所をもち、なせば成る、七転び八起きで頑張る日系ブラジル人の姿を描いている。

〔桜井 敏浩〕

(CCCメディアハウス 2016年2月   215頁 1,500円+税 ISBN978-4-48-16205-8  )