『チャベス政権下のベネズエラ』  坂口 安紀編  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『チャベス政権下のベネズエラ』  坂口 安紀編 

 20世紀後半の軍事政権が席捲したラテンアメリカにあって政党制民主主義を貫き、石油資源収入による経済の変容によって大土地所有制が崩壊し、社会的階層や人種の違いが相対的に調和が取れていたとされていた幻想を打ち砕いて、階層間対立を先導し社会を二分させたチャベスの1999年大統領就任から2013年3月の死去までの政治と経済政策を総括したもの。編者と浦部獨協大学教授にベネズエラ中央大学開発研究所の3人の研究者が参加し、2年間かけて行ったアジア経済研究所の研究プロジェクトの総合研究の成果。
 チャベス政権下での政治制度の変革、新しい政治アクターの誕生、支持・反対派市民社会組織の影響から始まり、チャベス政権が当初提唱した民主主義概念からの変質とその意味、「ボリバル革命」の中核であり、当時潤沢にあった石油収入を直接かつ大規模に投入して貧困層の生活水準を目指した社会開発政策「ミシオン」の効果、かならずしもネオリベラリル経済政策に対する反感がチャベスを政権につけたのではないとの反論とチャベス政権の経済政策と経済情勢、そして反米外交がどのように始まり、石油を梃子とした地域協力の枠組みの実態と意義を、チャベス政権の外交政策で考察している。
 現在、石油価格の下落が引き金になってベネズエラ経済は崩壊状態にあり、政治情勢はチャベス主義支持者と反対派に二分化された社会にあって今後の混乱がどこまで進むか予想が立たないが、その根源にあるチャベス政権の14年間を分析した基礎的な参考文献である。
                                  〔桜井 敏浩〕

 (アジア経済研究所 2016年2月 245頁 3,100円+税 ISBN978-4-258-29043-7 )

 〔『ラテンアメリカ時報』2016年秋号(No.1416)より〕