『信念の女、ルシア・トポランスキー -ホセ・ムヒカ夫人激動の人生』  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『信念の女、ルシア・トポランスキー -ホセ・ムヒカ夫人激動の人生』 

『世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉』(双葉社 2015年7月 http://latin-america.jp/?s=%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%A7%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8%E3%82%82%E8%B2%A7%E3%81%97%E3%81%84%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98&cat=18 )の上梓もある著者が、今度はムヒカ元ウルグアイ大統領の夫人ならびに関係者へのインタビューで纏めた半生の紹介。大統領時代も官邸に住まず、古いフォルクスワーゲンを自分で運転して“通勤”し、夫人も国会議員でありながら給与の大部分を慈善事業と所属政党に寄付して月10万円程度で首都郊外の農園に住み、“世界でもっとも貧しい大統領”と呼ばれるのに対し、夫妻は本書の中でも「私は貧乏ではない、質素なだけだ」と言っているが、上記の本も含めてすっかり“貧しい大統領”というキャッチフレーズが一人歩きし、類書も多いムヒカ物の新たな一冊。

ルシアは比較的裕福な家庭に双子姉妹の一人として1944年に生まれ、大学時代に社会主義革命を目指す極左武装組織ツパマロスに加わり、女ゲリラ戦士として政府機関や銀行、外国企業への襲撃、要人の誘拐や暗殺などの企画・実行に加わり、その闘争時にホセと知り合い恋仲をなったが、それぞれが軍に逮捕され拷問を受け苛酷な獄中生活を経て、1985年に恩赦法により旧ツバマロスのメンバー全員の釈放により13年ぶりに解放され、ホセと再会し同棲、ともにツパマロスの流れを合法闘争路線で継承する左派政党の政治家の道を選んだ。2010年にホセが大統領に選出され、ルシアはファーストレディになったのだが、そのライフスタイルは在任中も退任後も変わることはなかった。

本書は、ルシアの半生を主題としており、“世界でもっとも貧しい大統領”ムヒカ大統領を扱った類書と同様にウルグアイの現代史、極左武力闘争と軍政によるその関係者への弾圧と少なからぬ若者等の抹殺、民政復帰後のウルグアイの政治・経済情勢の背景やムヒカの大統領・国会議員、政治家としての功罪についてはほとんど言及することなく、本人や周囲の関係者の話し、既刊の伝記などでなぞっているだけである。

〔桜井 敏浩〕

(佐藤 美由紀 双葉社 2017年4月 223頁 1,400円+税 ISBN987-4-575-31241-6 )