『カルプリ メソアメリカの神話学』 アルフレド・ロペス=アウスティン | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『カルプリ メソアメリカの神話学』 アルフレド・ロペス=アウスティン

大分県宇佐市に本社を置く三和酒類(株)(酒類総合醸造企業で「下町のナポレオン」として知られる麦焼酎「いいちこ」等製造販売)が発行している文芸誌“季刊iichiko”(1986年創刊。現在では新曜社より市販本『LIBRARY iichiko』も発刊)に掲載された、著者のメキシコ国立自治大学(UNAM)教授とIICHIKO編纂者の山本哲士と阿波弓夫がメキシコ市で行ったインタビュー「ナウアの身体論」と4本の論考訳、訳者の篠原による著者の紹介を集大成したもの。

「海を越えてきたメシーカ人の歴史物語」では古代メソアメリカ文明のメシーカ=アステカ人の起源伝説をクロニスタの一人である布教者サアグンの記録から、この物語と「宇宙樹」を伝えた先住民の心中を覗き、「古代ナワ人の死をめぐる信仰」ではナワ人と植民地時代初期のカトリック修道士との死生観の違いを指摘し、「メソアメリカの守護神たち」では神々が一時的に現世で俗人になった伝統的な守護神とナワトル語で記された神話世界に対し、カトリックの奇跡を起こした俗人が守護聖人になったとする根本的な違いを説いている。「メソアメリカ伝統における宇宙樹」は紀元前400年頃のマヤ古典期の彫刻にも見られる天と地を分けて神の通り道である宇宙樹という考えが、メキシコ中央高原のメシーカを含む広い地域で現代に至るまで長く信じられてきたことを指摘している。

メシーカ自身やスペイン人の残した文献資料が不十分な中で、著者は彫刻、壁画、土器の図像等の考古資料や現代の民族誌をも使ってメソアメリカの神話の世界、宗教の様々な側面を考察している。

〔桜井 敏浩〕

(篠原愛人・林みどり・曽根尚子・柳沼孝一郎訳 文化科学高等研究所出版局 2013年2月 158頁 2,700円+税 ISBN978-4-938710-79-8 )