『レゲエという実践 -ラスタファーライの文化人類学』  神本 秀爾 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『レゲエという実践 -ラスタファーライの文化人類学』  神本 秀爾

 先住民と植民者の欧州人の文化にアフリカからの奴隷が持ち込んだアフリカ性と創造性に満ちた文化が入り交じった文化実践には、ブラジルのカンドンブレやハイチのヴードゥー、米国南部のジャズ等とともにジャマイカのラスタファーライがある。ラスタファーライ(以下 ラスタ)とは1930年代にジャマイカで始まった、植民者が持ち込んだキリスト教・聖書の教えに自分たちの苦難の意味と救済への期待を繋ぐ宗教的な思想と実践の体系を総称したものを指しているが、そのメッセージを歌い広める役割をもったのがレゲエという音楽だった。
 本書はレゲエにしばしば言及するもののその音楽研究書ではなく、第Ⅰ部では宗教的なものとポピュラー音楽との込み入った関係、ジャマイカで宗主国英国に代表される欧米的価値観に対抗する性格を備えていたラスタの思考様式や実践が存続する過程での変容、宗派、傑出したラスタのリーダーであったエマニュルによる他のラスタとの差別化と彼の死後の経済活動にももたらした変化、近年の動向を分析している。第Ⅱ部では日本でレゲエとともに紹介されラスタ(決して宗教としてではない)の展開、アフリカ系ディアスポラとは異なる歴史経験をしてきた日本人が地球・自然との一体化願望を共有しようとしている生活世界であることを、ラスタに大きく影響を受けたレゲエ・シンガーソングライターの原発のある福井県小浜市での地域住民と協力して行った歌作りの過程紹介で例示している。 
                                〔桜井 敏浩〕

(京都大学学術出版会 2017年3月 272頁 3,900円+税 ISBN: 978-4-8140-0087-6)

 〔『ラテンアメリカ時報』2017年秋号(No.1420)より〕