『米墨戦争前夜のアラモ砦事件とテキサス分離独立 -アメリカ膨張主義の序幕とメキシコ』 牛島 万 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『米墨戦争前夜のアラモ砦事件とテキサス分離独立 -アメリカ膨張主義の序幕とメキシコ』 牛島 万

 1821年にスペインの植民地ヌエバ・エスパーニャから独立したメキシコは、かつて現在の米国の西部と南部の大半を引き継いだが、現在のテキサス州東部は米国からの不法移民が占領し「テキサス共和国」として1836年3月に独立を宣言、テキサス不法戦士に占拠されていたサンアントニオのアラモ伝導所へメキシコ軍が総攻撃をかけ6月陥落させた「アラモ砦事件」が起きている。その後テキサス共和国は1845年に米国に併合され、両国は国交断絶、1846年には米墨戦争となったがメキシコは敗れ、1848年のグワダルーペ・イダルゴ条約により、テキサスとの国境はリオ・グランデ川とされ、カリフォルニアとニューメキシコは格安で割譲され、メキシコは建国時の領土の約半分に減少した。
 本書は、米国史上特有の領土拡張主義政策の象徴的事象であったこのアラモ砦事件とテキサスの分離独立、米墨戦争前夜の全体像を詳細に描き、メキシコから見たテキサス暴動制圧の意義と、全籠城者とその性格まで挙げたアラモ砦事件とその陥落後のテキサス側の援軍の虐殺を、生き証人による史実と伝説の相克、メキシコの大統領で軍最高司令官のサンタアナの暴虐性と言われているものを検証している。そしてアラモ事件をテーマにした米国映画ではジョン・ウェインが監督・主演した『アラモ』(1960年)が名高いが、現存する最古の無声映画『アラモの殉教者』(1915年)での描き方を批評し、現在のテキサスの表象としてのカウボーイとアラモをめぐる歴史文化の観光化と政治化を論じている。
 著者は、米墨関係・国際関係や米国ヒスパニック研究を意欲的に進めている京都外国語大学准教授。

                               〔桜井 敏浩〕

(明石書店 2017年7月 268頁 3,800円+税 ISBN978-4-7503-4523-9 )

 〔『ラテンアメリカ時報』2017年秋号(No.1420)より〕